『熱死戦線ビットウォーズ』の裏話

 葛西のデビュー作です(一部に誤解している方もいるようですが、ファンタジア大賞で佳作をいただいたのはコレではなく『戦国異形軍記』という作品。こっちは戦国時代を舞台にしたロボット戦記ものです)。

 実は本作の前に出した原稿について「悪くはないんだが今ひとつ地味」という指摘を当時の担当さんからいただきまして、じゃあ派手な話を、と考えたのがこの作品。派手にしようとしてコレになってしまうあたり、今も昔もそうとうズレているというか何というか……。

 アイディアの根っ子は三つ。
 まず、本編でも使った「宇宙全体の情報量は有限の、しかも時間とともに減少する資源である」という事。
 それと怪獣映画に対する不満。見た目が派手だけど「他人事」な高層ビルやランドマークを破壊するよりも、もっと身近な風景を破壊した方が遙かに恐ろしいはずです。例えば、新宿なら副都心よりもアルタ前という風に(後に、この不満は『ガメラ−大怪獣空中決戦』で解消されました)。
 そして……言うまでもないですが『聖闘士星矢』。一番最初にイメージがあったのは「拳銃のトリガーを引くと、銃のパーツが分解/巨大化してプロテクターになる」というもの。実際には銃はザコ一号になったわけですが、ネタが固まった時点で「運動エネルギー」よりも「光」の方が主人公としてはイメージがいいし、使い勝手がいいという単純な理由から。

 この三つが合わさってできたのが『ビットウォーズ』な訳です。
 後書きでも触れた通り、当時は青森在住でしかも勤め人だったため、東京でのロケハンには苦労しました。時間が限られていて土地勘がない上に、この年は記録的な猛暑。暑さに弱く汗っかきなもので、フラフラになりながら舞台になる場所を歩いてメモを取り、写真を撮ったのを覚えています。

 本作の世界観のヒントはいろいろあります。例えば手塚治虫の『赤の他人』という短編(および同様の唯我論というか「自分以外全部幻想か演技」ネタ)。それから、進化論と創造論を統一しようと考えられた「神はこの地球を過去の『環境の変化』や『生物の進化』というウラ設定まで盛りこんだものとして創造したのだ」という説とか。
 ただし、本編中ではごまかしてしまいましたが、例えば夜空に見える恒星の光だって生身の肉眼で捕らえている情報である事に間違いはないわけで、厳密に考えるとかなり矛盾があったりします。発表当時、某氏から「これって、人間の五感が直接届かない地下とかはどうなってるの?」と訊ねられ、「考えてませんでした」と答えるしかありませんでした、ハイ。

 何しろ完全オリジナル・ひとり立ちデビュー作という事で、当時はかなり夢見ておりました。アニメ化とか、そこまでのヒットはないにしても続編くらいはいけるんではないかと。実際には全然売れず、反響もなくて、長い雌伏の次期に入る訳です……。

 最後に、裏話らしいネタをもうひとつ。
『熱死戦線ビットウォーズ』といういささかストレートすぎるタイトルは、企画書を出す際に間に合わせで付けたもので、正直あまり気に入ってません。最後に考えた案は『絶対者の夏』というものでしたが、これは気取り過ぎという事で、担当さんが推した事もあってこの題名になった次第。
 ちなみに、構想していた続編のタイトルは『幻視者の冬』。真冬の札幌を舞台にする予定でした。こうくると四季が揃いそうなものですが、アイディアがあったのは2作目までというあたり、まあ獲らぬ狸の皮算用にしても迂闊ですわな。

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