『アニレオン!』シリーズの裏話


●初めに
 どうも世間では「編集部からギャルいっぱい萌え萌え小説を書け」と強要された結果『アニレオン!』が誕生したような誤解があるみたいですが、1巻の後書きでも触れた通り葛西の側から持ち出した企画で、エンターブレインの担当さんは当初は「本当にやるんですか?」と心配していたくらいです。

 さて、この企画。実はいちばん最初は電撃文庫に持ちこみました。と、言っても特に何か理由があったわけではなく、当時ファミ通文庫では『エシィール黄金記』を書いている最中であり、その次のシリーズとしても『パメラパムラの不思議な一座(仮)』が内定していたのに対し、電撃文庫では『小次郎破妖録』のパート2案がポシャったため、新規のネタを出さなければならなかったからというだけの事です。
『アニレオン!』の原型になる企画は電撃の担当さんにもそれなりにウケたのですが、当時既に『住めば都のコスモス荘』のアニメ化が進行中であり、作品のテイストそのものは全然違うけれど「変身ヒーローもののパロディコメディ」「ギミック上のキーパーソンが妹」など、キーワードがかぶるのはまずいという事で不採用になってしまいました。そこで円満に話を通した上で、改めてエンターブレインと交渉し、こちらを繰り上げて『黄金記』の次に進める事になった次第です。実のところ、こういう風に「ある出版社でボツになった企画が他社ではOK」というケースはさほど珍しい事でもなかったりします。
 なお、何で『パメラパムラの不思議な一座(仮)』ではなく、『アニレオン!』を優先したかというと、前者がある程度普遍的なテーマを扱った小説であるのに対し、後者は「今」という時代でなければ意味のない内容だったからです。萌え文化・萌え産業の変化についていけなければ、あっという間にネタが陳腐化し、笑えるところのない駄作になっていたでしょう。
 ですから、作者としても『アニレオン!』はある種の水物・なまものだと割り切り、出版された時に面白ければ3年後、5年後には「この時代にはこういうモンが存在した」という歴史的価値しか残らないようなものでも構わないと判断し、普通の小説作法としてはタブーに近い時事ネタ的なパロディもためらわず投入しました。

 ちなみに最初の企画書の時点で以下の5タイトルは順番こみで決まっていました。

1.地底百合帝国の侵略!
2.メイド海底人の恐怖!
3.未来メガネっ娘軍団、現る!
4.異次元からの逃亡お姉さん
5.宇宙妹星人の襲来!

 もちろん、確実に5冊シリーズ化できると限った話ではないので、一冊単位で各エピソードは完結するように考えましたし、実際には3巻を出す時点で「全4巻」の方針が固まったため、ネタの弱い3と4を併せて一冊にした上で、最終巻へのヒキを持たせたのは皆さんご存じの通りです。


●メインキャラクター
 基本的なシフトは構想段階からほとんど変わっていません。ただ、いちばん最初のメモでは祐衣はもっと普通の名前で、性格もおとなしい巻き込まれ型ヒロイン。特撮ファンという設定もありませんでした。しかし、徹底的に圭一をいじめた方が面白いだろうという判断のもと、現在のキャラクターに変更しました。
 なお、以前掲示板でもご指摘あった通り「桧垣之祐衣」は「悲劇のヒロイン」、「佐保泉美」は「サッフォイズム(女性同士の同性愛の事)」から取った名前。このネーミングは「要するにこの作品はふざけたギャグですよ」という読者の皆さんに向けたサインでもあります。
 それと『アニレオン!』を続けていく上で注意したのは「同性愛者は現実に存在する」という事を踏まえて書こうという事です。いえね、別に倫理的使命感があった訳ではなくて、今さら「主人公の親友の美形男が実はホモだった」というだけで笑いを取れるとは思いませんでしたし、だったいっその事、そいつを「いい奴」にした方がひねった分だけ笑えるネタも引き出せるだろうという判断からです。公彦を筋金入り、物心ついてからの同性愛者にしたからには、もうひとりの泉美は「たまたま好きになった人が同性」という別タイプにした方がいいとか考えて、比較的スムーズにキャラ配置はできました。
 アニレオンのデザインに関してもちゃんと計算があります。圭一本人に積極的なやる気がないので、アニレオンの能力に制限などがあれば話が無駄に滞ってしまうので、とにかく一度変身してしまえば圧倒的に強いという設定にした方がいい。だったら、圭一が内心でどう考えていてもアニレオンのかっこよさは変化しないように表情が出ないタイプに、と。


●1巻
 当時日記でも触れましたが、最初のタイトルは『爆愛ヒーロー・アニレオン 地底百合帝国の侵略』。ただし、極端にヒーローものっぽい題名は営業上プラスにならないという判断から、担当さんの提案を受けて現行タイトルが決まりました。以後3巻まで、最初はヒーローもの風の仮タイトルをつけて、発売前にハートマークがつくようなラブコメ(?)っぽいタイトルにするのが恒例化しました。
 後書きでも書いた通り、どういう経緯でこのネタが出たのか細かい経緯は忘れてしまいました。最初に「ヒーローもので息子が父親に改造されるパターンは多いが、逆はどうだろうか」とか考えているうちに「マッドな妹に改造されるお兄ちゃん」というネタになり、戦う目的が「禁断の兄妹愛を守る」になり、敵として百合帝国が出てきた……というような流れだったような気もします。
 百合帝国の面々の名前はユリの品種から取りました。ただし、元の花のイメージなどはまったく考えず、言葉の響きだけで当てはめています。改めて読み返すと、ユーリ・ガガーリン先生になる前のルレーブの性格はどこへ行ってしまったのやら……。余談ですが、ルレーブ初登場シーンの乳描写は第一稿ではもうちょっとクドかったのですが、あまりしつこいと読者が引くという意見を容れてああなりました。

●2巻
 仮タイトルは『謎の海底メイド人』。変な萌えウンチク、暴走する祐衣の特撮ネタなど、後の方向性を決めた一冊。もちろん海底メイド人はマーメイドからの着想。
 後書きで触れた「人魚メイドが登場するアニメ」は『仰天人間バトシーラー』。レディメイドというキャラ、人魚でメイドさんでメガネっ娘、しかもチャイナでファンタジー女戦士でナースでカウガールでタヌキの着ぐるみ、しかも声優も後に『シスプリ』にも出演する柚木涼香という美味しいキャラでありながら番組が今一歩マイナーなせいかキャッチな割には人気なかったですねぇ。キャプテンファッツとの距離の取り方とか、なかなか面白いキャラクターだったんですけど。
 海底メイド人の名前は海産物の学名から。セリオラはブリ、リマンダはカレイ、キャランクスはサバ……というように。こっちは語呂と意味と両方から考えました。パニュリルスはイセエビ(ロボだから外骨格)、エシェネイスはコバンザメ。ラミナリアとココフォーラのお色気コンビはワカメとテングサという海草コンビでもあります。
 私も担当さんもノってきたせいか、逸話も多い巻でもあります。海底メイド人は最初セリオラ・キャランクス・リマンダの三人しか決まってなくて、他のは担当さんの「もっとメイドさんを増やしましょう」という意見の結果生まれたキャラだとか、圭一が拉致される事は最初から決まっていたけれど、一緒に連れ去られる候補として泉美の他に「祐衣案」「祐衣と泉美のコンビ案」「バルバレスコ&ベルニニ案」などがあったとか……。あ、「海の幸魚肉ソーセージ」というギャグは富永浩史さんからいただきました。

●3巻
『メガネっ娘未来人VS異次元おねーさん』という仮題がありましたが、こちらは前二冊とは違ってファミ通文庫の公式サイトではこの仮題は告知されず、当HPで触れただけとなりました。
 当初別々に考えていたアイディアを一冊に合体させたもの。ただ、平行世界と未来というのはどちらもこれまでとは違い、時空を越えてくるタイプの敵なので案外歯車の噛み合いはよかったような。
 薔薇帝国構成員の名前も百合帝国同様、バラの品種から拝借しました。花の色などは考えずに語呂だけで決めたところも一緒です。ニネヴェというのは最古のレンズが発見された地名。
 ちなみに偶然ダブルデートの現場が後楽園ゆうえんちでないのは、祐衣と泉美の移動の手間というより、ちょうど執筆している時に後楽園ゆうえんちが改装中で観覧車が存在していなかったからです。このシーン、作者本人にデートの経験値が足りないため、同じファミ通文庫の『あだたら卓球場決闘ラブソング』などその手のシーンがある小説を読んでテンションを高めたりもしました。
 また、この巻に関しては帯のテキストも葛西から提案したものです。一巻が『エヴァ』風のごちゃごちゃテキストで2巻が「泣かせ系ギャルゲー」風と来たので、3巻の帯も何か趣向を凝らしたものにしようと担当さんと話し合い「せっかくファミ通文庫なんだからゲーム攻略本のパロディはどうか」と思いついたのです。会社が同じとはいえ部署が違うので、私の無責任な思いつきが実現できたのは担当さんの尽力の賜物ですね。

●4巻
 完結編です。タイトルは『シスターウォーズ』と『世界が萌えつきる日』の両案があり、採用されなかった前者は章タイトルに流用しました。なお、このタイトル案はどちらも麻生俊平さんから。
 妹星人の名前(およびMSの名前)はアニメや文学作品などに登場する妹キャラからの流用。キシリアが妹キャラというのはちょっと盲点?
 実はこの巻、三妹妹の外見に関してはあまり詳細に描写していません。これ、実を言うとこれまでの三冊で「文字で書ける女の子の顔だちや髪型のバリエーション」をかなり使い切ってしまったという情けない理由によるものです。オダワラさんなら細かく設定しなくても、魅力的なデザインにしてくれるだろうという信頼感もありましたし。
 途中で話だけ出てくるさまざまな帝国に関しては、もうあそこに書いてあるだけで別に細かいデータとか隠されたエピソードとかはありません。まあ、浴衣帝国の縁日獣に関しては同業者友人と雑談している時に「きっと金魚とかカラーひよことか、縁日に関係ある生き物の形をした巨大ロボだ」という事になりましたけど。
 なお、ラストの祐衣に関しては当初「バイセクシュアル宣言」をさせようと考えていました。いちばん好きな男性は圭一だけど、最愛の女性は泉美である、と。ただ、これはさすがに読者が引くだろうという事で、結局ちょっとぼかした現行バージョンになった次第。


 さて、掲示板の方でもリクエストがありましたギャグ注というか、作中で引用しているパロディの元ネタ解説。こういう形でネタを説明するというのはちょっと野暮な気もしますし、そもそもこんな事、知ったところで人生において何の役にも立ちませんし、何の自慢にもなりません。それでもどうしても知りたいという奇特な方だけはこちらをどうぞ。


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