『星になり損ねた男』の裏話


 小説版の『マップス・シェアードワールド』の話は、実は一巻発売のかなり前から知っていました。と、いうのも中里融司さんが飲み会の席で「こういう企画があるんですよー」と話してくれたからです。
 しかも、中里さんが書くのが『流星のジュディ』! よりによって、原作最初期にちらっと出てきただけのイースターの娘ですよ!
 フィクション屋というのは、こういう風にネタを振られると「だったら俺も俺も」と反応せずにはいられない生き物。特に私は後書きでも触れた通り他の人が目をつけないようなスキマが大好きなタチなのです。
 で、その場で即座に飛び出したコンセプトが「アーマード・ダイオンがサボテンブラザーズする話」なのです。
 元々『マップス』のファンですし、ネタを思いついてしまった以上、じっとしてはいられません!
 中里さんを通じ、あるいは機会を見て直接各方面に売り込みをかけましたよ。ええ、もう怖いもの知らずに図々しく。
 参加メンバーの中で明らかに知名度や商業的実績で一枚格が落ちる私が参加できたのは、この熱意を評価してもらえたのかな……とも思います(何しろひとりだけWikipedeiaにページがないしw。あ、でもこの本に関しては参加者のひとりとして「格が落ちる」ものを書いたつもりはありませんぜ、もちろん)。
 しかもどういう巡り合わせか、今回参加メンバーの中に「あ行」の方がいらっしゃらないんで、私の名前が真っ先に記載されちゃうんですよね。

 さて、参加者の特権は執筆に際しての疑問点などを長谷川先生ご本人に確認できる事。
 テビレ・アミメの連中に関しては「ああいうビメイダーである」「ああ見えて、実は自然発生人」「ビメイダーとも異なる’ロボット’」という三通りの解釈があります。一応どれでも成り立つように基本プロットを立てた上でお伺いを立てたところ1番という答がいただけたので、実際の原稿がああなった次第。
 ちなみに3番が正解だった場合にはエアッカは「ロボットのフリをして生活しているビメイダー」になる予定でした。

 執筆に当たっては、少なくとも私は他のメンバーと打ち合わせたり連絡したり、という事はしていません。
 ですから山本弘さんの作品とほぼ同じタイミングで、ゲン本人とゲンの実態を知らないダイオンが同じような事で悩んでいたり、友野詳さんの作品での伝承族の生態や「テレパシーやテレキネシスで生活する生き物」の描写が上手くかみ合うようになったりというのは、まるっきりの偶然です。このあたりも、こういうアンソロジーの醍醐味ですね。私自身、現物を読んでびっくりしたりニヤニヤしたり。
(拙作が「あのタイミング」になっているのは、銀河辺境のダイオンとエアッカが「ダイナック関連の情報を知っている」事を描写する必要があったからです)

 なお、エアッカはダイオンと合わせ技で「ダイナック」に近くなるように。ヴキンノは「脳ミソ筋肉=脳筋=ノウキン=ヴキンノ」というネーミング。
サイロノム人は「モノリス=Monolith」を逆から変形させて「(th)ilonom」。クブーはスタンリー・キューブリック監督の古い表記「クブリック」から採りました。
 ついでに、後書きのタイトルである「広くて素敵な宇宙じゃないか」はレイ・ブラッドベリの小説を原案とした演劇集団キャラメルボックスの作品タイトルです(ただし、芝居の題名は「広くてすてきな〜」です。「素敵」にしちゃったのは、私のミス)。
 もちろん『マップス』が内包するスケール感に敬意を表しての引用ですが、このお芝居自体が「アンドロイドのおばあちゃんと人間のふれあい」を描いたものだったりします。


追記:
 これは2008年のSF大会でもちょっと触れた事ですが、どうも近年語られる「熱血」というのが「知性の放棄」と同列の扱いなのが個人的には嫌なんですよね。
 長谷川作品の大きな魅力というのは「99%、いや120%知恵を巡らせ、工夫をして、手順を踏み、努力を重ねて、それでも不可能と思われる局面を微かな可能性を信じて進む」というのがあると思うのですよ。『マップス』しかり『逆襲のギガンティス』しかり『皇帝の紋章』しかり。
 最初から「何も考えずに主人公が大声を出して特攻すれば奇跡が起きる」「無理を気合いや勇気だけで埋め合わせられるのがあらかじめ前提になっている」わけじゃないんです!
 ですから、本作のクライマックスでは「そういうバトル」を心がけました。


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