近頃の読書(020115)

 いよいよ2002年のビジネスの始まりということで,仕事始めの前に景気づけに『小説 中江藤樹』(上・下/童門冬二/学陽書房)を読みました。その後,『文化人類学への招待』(山口昌男/岩波新書),『親愛なる』(岡部まり/世界文化社)の2冊を読みました。

 『小説 中江藤樹』。中江与右衛門(藤樹)は9歳で祖父の養子となり,親元の近江・小川村を離れ祖父とともに米子に。さらに翌年伊予大洲に。米子・大洲で朱子学を学びやがて藩で講義をするまでになるが,主君が江戸から連れてきた儒学者にその地位を奪われ脱藩。小川村に帰って私塾を開き,そこで朱子学・陽明学(この小説によれば医学も)を講じ41歳で没した。この小説は,江戸幕府が3代かけて中央集権体制を確立しようと林羅山を中心に朱子学をうまく利用していた時期に,真に住民のためになるような学問の普及を目指して行動を起こした男の物語として書かれています。例によって勇気の出る小説です。毎度,先生の本を読むと背中を押されるというか,後ずさりしないよう背中を支えてもらっているような気分になります。童門冬二先生は元東京都企画調整局長・政策室長。中江与右衛門は武士としての地位を捨てた後に私塾を開きましたが,童門冬二先生は公務員としての肩書を捨てた後,執筆・講演活動に入っています。このあたり先生の経歴とダブリます。

 『文化人類学への招待』。『内田魯庵山脈』で大いに楽しませていただいた山口先生に敬意を表して,ちょっと読んでみました。書名にもあるとおり山口昌男山脈の中のほんの入口の立て札といった趣でした。 多摩市の市民向け講座で先生が講演した内容が再現されています。この講座を企画されたのは,大場悟さんという方です。多分,多摩市の職員の方だと思います。大場さん,ありがとう! で,本についてですが,話し言葉でかついろいろなギャグもあって,そこそこわかりやすいです。オススメです。私は備中神楽の話のところが一番興奮したかもしれません。「ブンカジンルイガク」なんて難しいことを言わず,舞踊や風習などを興味を持って見てみるとエライ面白いぞ,と,そんな視点を提供してくれています。この市民向け講座に,何と大江健三郎氏が毎回参加されたそうで,講義の最終日に発言をされています。それも収められています。そのお話がまた,なかなかイケテまして励みになります。

 『親愛なる』。私は,子どもの頃,ゴジラなどと一緒に上映されていた『若大将』シリーズが好きで,特に酒井和歌子さんのファンでして,で,その流れで,岡部まりさんのファンなのでありました。私の分類では,スレンダーで,色が白くて鼻がちょっと上を向いていて,目が涼し気族ってことなんですが(最近では飯島直子さんのファンなのです)いかがでしょうか。このお三方似てません? で,そんなわけで,例によって古本屋さんで書棚をボーっと眺めていたら,その岡部さんの本を見つけて,即買ってしまったというわけです。はは。そうなんです。ミーハーなんです(山本リンダさんの本も読んだことあります)。
 この文章は何かに連載されたものなのでしょうか,文章のリズム,落とし方が妙にしっかりしてます。ややパターン化されすぎているかもしれませんが,きっとこれは岡部さんのきっちりした性格の反映なのでしょう。さらっと書いたのではなく,何度か練った文章であることは間違いないと思います。「女」という字をキーに「汝」「妙」「如」などで章立てがしてありますが,これはあまり本文には効いてないみたいです。ま,それはともかく,岡部さんはなかなか良いことをおっしゃる方で感心してしまいました。『“無知”ゆえの初体験は「知らなかった」というショックと「知ってよかった」という喜びが同時に重なり合う』なんて,いい文章ですよね。肩の凝らない,自然な文体で,好印象でした。


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