『日本の「敵」』中西輝政,『石神井書林 日録』内堀弘,『世界がもし100人の村だったら』マガジンハウス,『あれも家族 これも家族』福島瑞穂(020105)

 昨年末から,酒気帯びではありますが,時間の空いたときにチビチビ読書。この1週間はなかなかいい本を読みました。そんなつもりはなかったのですが,いずれも新刊,いずれもオススメです。

■『日本の「敵」』(中西輝政/文藝春秋)
 
実はこの本は『敵国日本』を買うつもりで(いい加減に書名を覚えていたので)間違えて買ってしまった本です。中西先生(京都大学教授)は,国際政治,国際関係史がご専門。このところ新聞等で先生の短い文章を拝見してますと,「あら? こういうことをおっしゃる方だったかな」と感じることが多く,1度まとめて先生の著書を何冊か読みたいなと思っていたのでちょうどよかったです。さすがに重要な警句・文章が随所にあり,鉛筆と付箋を用意して読みました。いくつか紹介します。
 
『平成日本のこれまでの失敗の原因は〜(中略)〜,「長期の悲観」を抱きつつ「短期の楽観」の中で事態に処するという,人間の営みの中で最も失敗しやすいパターンになっていたことが,その「失敗の本質」であった』(87頁)
 
『2001年に起こったこの「小泉現象」は,私の見るところでは決して日本再生の兆しではありません。これは日本よりも先に「先進国型衰退」を経験した多くの国々で見られたのと同じ,衰退がいよいよ本格化する際に見られるデスパレート(自暴自棄的)な「ポピュリズム改革熱」の加熱現象でしかないのです』(88頁)
 
『長い長い国際関係の歴史を見てゆけば,そこでは「正義は時代により大きく変遷する」,それから「国と国との関係はそれ自体の論理と正邪の基準によって処理され,個人間の関係とは絶対に等視できない」という視点が自から明らかとなります。――この二点を押さえておけば国際関係を大きく見誤ることはないといっても過言ではないでしょう』(159頁)
 
『冷戦後の世界での「護憲的安保論」や戦後左派的な「市民主義」的平和論は,日本の自立はおろか二十一世紀の日本の存立すら危うくするものだということを知らねばならない』(268頁)
 
『長い日米関係の中で冷戦的親米主義の惰性に発する安易な一体感が,「他者」意識を失わせかねないことへの鋭い自覚がなければならない』(268頁)
 勉強になる部分が多かったものの,当然,納得のいかない部分が宿題として残りました。つまるところ,「国家」という集団や「国際関係」について勉強不足・認識不足であるということなのでしょう。中西先生ははっきりした言葉で書かれる方で,おっしゃることはわかりやすいです。今後も引き続きこの先生の著書は読んでいこうと思います。

■『石神井書林 日録』(内堀弘/晶文社)
 石神井=「しゃくじい」と読みます。東京都練馬区内の地名です。この石神井で近代詩専門の古本屋を営んでいるのが著者の内堀弘さん。文化人類学者の山口昌男先生が帯に推薦文を書いています。「このところ古本屋さんの本が色々と出たが,本書は決定版である。古書の蒐集家としての面目が,あらゆる面でまんべんなく出ている」。そりゃ誉め過ぎでは…という気もしないでもありませんが,充分面白い本でした。「何といっても一冊一冊の本には顔がある。テキスト以外に装丁や紙質,組版や活字,巻末の広告頁,いくつものチャンネルから様々な情報が発信されている。そして,実はこれが肝心なのだが,これらを蒐めていく苦労が楽しいのだ。そう,全集にはこういう面白い無駄がない」(118頁)。しびれました。晶文社さんってホントにいい本出しますねえ。

■『世界がもし100人の村だったら』(マガジンハウス)
 アメリカ同時多発テロがあった頃(2001年9月),あるメーリングリスト経由で,この本とほぼ同文のメールを受け取りました。すぐプリントアウトして子供たちに読ませました。年の暮れ。高2の娘が「あれ,本になってたよ」と教えてくれました。マガジンハウスさん,反応早いっすね。イラストを入れお洒落な本にしてくれました。なるほど,プリントアウトしたペラペラの紙切れ1枚よりずっといいです。でも決定的に読みづらい。とはいえこれは保存版とさせていただきます。ちょっと引用。「20人は栄養がじゅうぶんではなく,1人は死にそうなほどです。でも15人は太り過ぎです」。

■『あれも家族 これも家族』(福島瑞穂/岩波書店)
 先頃,社民党の幹事長に就任された弁護士・福島瑞穂さんの著書。弁護士や市民運動家,代議士としての経験から家族を巡るいろいろな問題点について,現状や対処法,今後のあり方など,わかりやすく述べてくれています。カバーがちょっと女性向きな感じ過ぎるかも…。それと中を開くと学術書みたいなつくりです。例えば手元の本で見ると,同じ岩波書店の『憲法』(芦部信喜)を開いたのと大差ありません。ちょっと福島さんっぽくない感じがしますがいかがでしょうか。中身は面白いです。現場ではこういうことがあるのかとかこんな問題点・法の矛盾が放置されているのかなど勉強になります。私は遺言に関するところも勉強になりました。ところでこの本とは関係ありませんが,福島さんが冒頭の中西先生の本を読まれたら激怒されると思います。土井たか子さんや辻元清美さん,田嶋陽子さんも交えて,どんなことをおっしゃるか聞いてみたいものです。


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