『紀州』中上健次,『戦後短編小説再発見2 性の根源へ』(講談社文芸文庫),『敵国日本』ヒュー・バイアス(011229)
 2001年のお仕事終了。ビジネスのほうは,実に地味な1年でした。個人的に収穫なしということではないのですが,私の属する会社は,「経費削減」「コア・コンピタンス」という合言葉の下,順調に売上げもコアに向かって縮小,経費削減はもう痛みを伴わないところはほとんど削れず人件費削減で凌いでおります。社内には緊縮モードが蔓延し,首をすくめて嵐の通り過ぎるのを待つような姿勢でひたすらルーチン・ワークに精を出すのが「真面目な社員」という雰囲気です。しかし,こんなことを続けているうちは会社は絶対に上向かないし,社員も成長しないと私は思っています。で,緊縮モードが蔓延する中,拡張的な政策も採らないとアカンなんて言ってますと,自分が徳川吉宗の時代の尾張宗春のように思えてきて,このままだと「(宗春のように)社内的にマズイことになりそうじゃ」という予感がしております。はは。コマっちゃうなあ…。でも困るのは来年に「先送り」。

 さて,で,仕事納めの前の10日ほどは,昼間は二日酔いでボーっとし,夕方から夜はアルコール燃料満タンで元気一杯,記憶も吹っ飛びまくりという状況でした。そのようなわけで,読書のほうはわずかに3冊。

■『紀州』(中上健次/角川文庫)
 
知人の中で,中上健次を推す人がいずれもなかなかできる人たちでして,こりゃ読まなアカンとずっと思っておりました。たまたま近所の古本屋で1冊売ってたのが本書です。中上氏は紀伊半島の各地を歩き回り,その土地土地で地元の人がよそ者には口を閉ざすような話を聞いています。被差別,津波,馬喰,製材,材木かつぎ,筏乗り,遊郭,女郎,毛坊主,腐肉,屠場,豚,牛,熊野詣で,伊勢参り,天皇,吉野,戦争,皮革製造,部落解放,雑賀孫市,大逆事件紀州グループ,「今,私に,生活はない。あるのは言葉だけだ。コトノハだけだ。言葉によって地霊と話し,言葉によって頬すりよせ地霊と交感し,私は傷ついた地霊を慰藉しようとも思う」「物の怪が私にとりついているのでなく,私が物の怪にとりついている」「語りとは書くという行為を超えてある」…こんな言葉に何度も躓きながら,小説家の大徘徊に付き合いました。例によって,私の勉強不足が大いに悔やまれたことでした。これからコツコツと中上健次も読んで行こうと思いました。

■『戦後短編小説再発見2 性の根源へ』(講談社文芸文庫)
 
この本の中に収録された富岡多恵子さんの『遠い空』は絶品…と,教えていただいたので読んでみました。『遠い空』は確かに佳い作品だと思いました(ありがとうございました。Kさん)。その他,坂口安吾,田村泰次郎など収録された作品は皆それぞれにイケてまして(偶然,中上健次の作品もありました),この『戦後短編小説再発見』シリーズ全10巻も今後のお楽しみに加えることとしました。

■『敵国日本』(ヒュー・バイアス著,内山秀夫・増田修代訳/刀水書房)
 この本も勧めてくれる方があって読みました。第1部がパールハーバーから僅か70日で執筆・出版されたという「敵国日本」(1942年=昭和17年2月発行),第2部が「日本問題」(1943年=昭和18年3月発表)です。真珠湾攻撃は1941年=昭和16年12月8日。この本を読んで,反応のスピード・内容から「ヒュー・バイアスって,もの凄く頭のいいジャーナリストだ」と唸ってしまいました。それと驚いたのは,失礼ながらあまり聞いたことのない版元さんの本なのに,2001年9月20日初刷で私が購入したものが11月15日4刷でした。現在の日本にこの著者に匹敵するようなジャーナリストがいるのか心配になる一方で,少なくとも読み手はいるのだなとちょっと安心したりして…。


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