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『かけがえのない人間』上田紀行(091003)
なんちゅうタイトルの本なんだ,というのが第一印象。一体何を語るわけ? なんてことも思いました。著者は私と同じ1958年東京生まれ(杉並育ち/アタシは練馬育ち)。東大で文化人類学を学んだ人。ま,いちおう,じゃ買っておくか…ということで。
■『かけがえのない人間』(上田紀行/講談社現代新書/本体:740円)
文化人類学については山口昌男先生の本で随分学ばせていただき,青木保先生の文化論も面白かったし,結構信頼・期待しているのです。そういう学問をされた,しかも同じ歳の東工大の准教授が語ることを,心を真っ平らにして聞いてみることにしました。2008年3月発行。
一人ひとりが、自分自身をかけがえのない人間だと思うことができなくなってしまい、「自己信頼」を失ってしまっている。そして社会の中に本来あるはずの「社会に対する信頼」も失われている。
しかし、自分も信頼できない、社会も信頼できない、そんな状態で人間は生きていけるのでしょうか?
その答えは、断じてNOです。(22〜23ページ)
本書はこうした日本の現状認識からスタートします。そして,「癒しブーム」について
個人的な癒しで全てが解決するとは到底思えません。会社がストレス源ならば、会社の仕組みを変えなければならない。学校でいじめられているのなら、そのいじめを解決しなければいけない。当然、社会的な解決が同時に図られなければいけないのです。(71ページ)
とおっしゃる。なるほど。私なんぞは経験上,世界は自分の心の持ちようでいかようにも見える,時間が経って改めて振り返ると別の様相も見える…ということもあるので,ついそれで流してしまいますが,それはつまり,1つの社会の構造的病理についてはそのままにしていることでもあり,それはアカンだろ…ということなんですね。
腐った組織の中にいて,KYでビクビクしてどうすんだってことでもありますよね。そうではなくて,この腐った組織をよくしようと「オレがやらないで誰がやる」ぐらいの勢いで(こうすると自分もかけがえのないものと自己肯定できたりもする),お互いを尊重するような組織をつくるべく行動してみようと,こういうことなんですねえ。10人のグループがあったとして,みんなKYでビクビクしてて楽しい? 愛されたいなんて思ってないで,バンバン先に愛しちゃいなさいよと。そういう人が増えれば,そのグループには愛情がどんどん満ちてきて,とても居心地がよくなるはずだぞ…ってのが,上田先生の主張であります。
本当にこういう社会を目指そうと先生はおっしゃっております。わかりやすい,なんだか懐かしい気持ちになる答えですねえ。よろしいと思いますが,もしかして,もうこれでは行けないぐらい人々の心が壊れてるってことはないですかね? 私はそれを否定できないんですけど…。ちなみに私の心もだいぶ壊れてますが,周りで守ってくれる人がたくさんおり,何とかそれなりに社会生活を取り繕っております…。(笑)
本書には先生のノイローゼ体験やらパチンコ依存症など興味深いことがたくさん書かれています。楽しい読書でした。上田先生,お疲れさまでした。ありがとうございました。
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