『死刑』森達也(091003)

 このところ,とても気になるのが,人の(命の)扱いの軽さ。「アルカイダ掃討」とか「派遣切り」といった言葉を普通に使う神経ってどうでしょうか? 少年による残虐な事件が続き,その被害者の応報感情といったことも取り上げられ,最近では殺人事件の被害者が「加害者には極刑以外望んでいません」(アイツをコロセ)と,女性でも平気で言うようになりましたし,いわゆる「厳罰化」も進んでいるように思います。「許せない」という言葉もよく聞くようになりました。KYだそうで,周囲と合わせられない人はのけ者にされたりいじめられたり…。何だかなあ…。おかしい。まあ自他共に認める大逸脱男のアタシが何を言っても説得力はないのですが…。

■『死刑』(森達也/朝日出版社/本体:1,600円)

 森達也さんは巻末の略歴によると,1956年生まれの映画監督・作家。オウム真理教のドキュメンタリー映画『A2』で2001年山形国際ドキュメンタリー映画祭にて審査員特別賞,市民賞受賞。著書は『放送禁止歌』(知恵の森文庫),『いのちの食べ方』(理論社)など。いわゆる社会派的なテーマを追いかけている方なんですかね? 不勉強ですみませんが…。

 本書は2008年1月20日発行。3年にわたる取材と思考の成果。四六判変形サイズで328ページ(厚さ25ミリ程度)。

 森さんが会ったのは,「死刑廃止運動」をしているグループ,死刑囚の弁護人,死刑をテーマとした漫画『モリのアサガオ』の作者・郷田マモラさん,殺人事件の被害者の遺族,「死刑廃止を推進する議員連盟」に属する国会議員(保坂展人,亀井静香),死刑執行に立ち会ったことのある元大阪高検公安部長,冤罪元死刑囚・免田栄さん,教誨師(きょうかいし),死刑の判決文を書いたことがある元裁判官,死刑を執行したことのある元刑務官など。東京だけでなく,九州や大阪などにも取材で行っています。明治大学博物館で拷問道具の展示を見たりもしています。

 死刑の存廃につき森さんが悩んだ足跡。読み応えがあります。

 森さんと一緒に「わからんなあ〜」と何度も思いつつ,この問題は結局,論理的には割り切れないし,感情論で押せばいいというものでもないということがわかりました。こういうときは,最悪なことが起こりそうなほうを避けるということでいいと私は思います。それと,EUの加盟条件の一つに死刑廃止があるそうです。これは大いに参考にするべきなんじゃないですかねえ。


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