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『旅ゆけ茶人』チチ松村(091003)
『それゆけ茶人』が売れたので,速攻で同じイメージで類書として売り出された感じの本。
■『旅ゆけ茶人』(チチ松村/廣済堂/本体:1,456円)
本書は1994年9月初版,私の手元にあるのは1995年1月の2刷。初めて出した本に続き,本書もそこそこ売れたんですね。茶人はお金を稼ぐのが…,いやはや,ご同慶の至りってヤツでございます。
この本は,『それゆけ茶人』(以下,それ茶)よりだいぶ面白かったです。それ茶はいわば,初対面の挨拶みたいなもので,やはりちょっと遠慮がちだったんですね。ところがこの『旅ゆけ茶人』(以下,旅茶)では,もう認知されたということで,結構思い切った文章が載っています。「悲哀のパリ日記」という文章は最高です(いわゆる,ビローな話なんですが,本当に最高に最低な事件に関する話でして,概要すらとてもここには書けません)。それに続く中島らもさんとの旅行記は,さらにメタメタ。マトモな人だととても読むに耐えないと思われます。それ茶はいちおうそれなりの節度の範囲内でまとまってはいるのですが,旅茶は中島らもさんの破壊力のおかげで最後は破綻。チチ松村さんの世界は「はんなり」感があると思うのですが,最後の破綻も許すその寛大さを感じ取れるか読者のみんな? と試されている感じ(好意的すぎるかな?)。
さて,最後は破綻するとしても,この旅茶では,音楽に関する文章が一杯入っています。さすがに本分ってヤツなんでしょうねえ。シビレル文章がたくさんありました。私には音楽的知識もほとんどないので,深く味わえていないことが残念。ジャンゴというギタリストについて語った文章…
火の出るような早いフレーズ、それでいて心に残る音運び、それは今まで聴いたことがないようなメランコリックな世界でした。
(中略)十八歳のとき、(中略)大ヤケド、左手の薬指と小指が動かなくなってしまったのです。しかし、そのハンディを乗り越え、二本の指を使ったそのギター・スタイルを完成させたというのです。(中略)
そしてもっとすごいことは、彼は楽譜はもちろん、文字の読み書き、自分の名前のサインすらできなかったというのです。おまけに時間はルーズ、女にもルーズ、賭けごと大好き、それでいてプライドは高いという、まさにギターをとれば最低なやつなのですが、僕はよけいに好きになってしまうのです。(66ページ)
興奮がどおおおおっと伝わってきます。最後の文章もいいですねえ,こういう方だから本書の破綻もそのままにしておけるんでしょう。もう一つ。藤正樹(ある一定の年齢以上の人しかわからないでしょうが)について語った文章。
十五歳であの声を出すとは、天才というしかありません。あの声はサルサもいけるし、ファンクもアフリカ音楽もバッチリです。(103〜104ページ)
藤正樹を聴き直したくなっちゃいますね〜。
また告白。
本書のカバーを見て,それ茶と同じくまたデザインが南伸坊さんみたいだけど,違うんだよな〜と思いました。 でも今回は本当に南伸坊さんでした。またまたため息。全然修行が足りませぬ。
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