|
『自衛隊風雲録』田母神俊雄(090813)
いかにも面白そうな感じのカバーデザインであります(下/白土三平風?)。カラー写真と「危険人物」という赤い文字が入っているのは帯でして,カバーは何と黒1色しか使っていません。シブイ!(空軍のイメージはないけど…) 本書は2009年5月20日第1刷,私の手元にあるのは6月11日第3刷。素晴らしい。売れてまっせー! ってことですねえ。「タモちゃん(本書でご本人もこの呼称を使用。いいですねえ!),印税ガッポリだね!」と,お慶び申し上げますであります。
■『自衛隊風雲録』(田母神俊雄/飛鳥新社/本体:1,300円)
田母神俊雄(たもがみ・としお)さんは,航空自衛隊のトップである元航空幕僚長。私は詳しいことは全然知らないのですが,応募した懸賞論文の内容が問題となって更迭された方。まあ,一般のイメージとしては,この人はひどく右に偏った人で,こういう人が自衛隊の幹部になっているというのはよろしくないのではないか…というところでしょう。
以前,藤岡信勝先生の『汚辱の近現代史』(徳間書店)を拝読したとき,当然ですが,そういう考え方もアリだよな〜と何度も思ったことがあり,おそらく今回もそういうことがあるだろうと予想して読み始めました。予想どおり。やっぱり,ある組織で上のほうに行く人は,それなりの人物なんですなあ。田母神さんはとても魅力的です。教養もユーモアもあり,もちろん腹も太い…と。本書からいくつか引用させていただくと…
焚き火は、下から燃えるが、組織(自衛隊)は、上から燃えなければ、大きな炎にならない。燃えない組織は“不燃物集積所”になる(42ページ)
私は、この日本において、自衛隊への信頼も、警察への信頼も、失われたことなど一度もないと思う。
たとえ、信頼が失われたと報道されているその瞬間でさえ、大災害や大事件が起き生命の危機に晒されるようなことが生じれば、国民の多くは、自衛隊や警察の支援を期待する筈だ、と私は信じている。(130ページ)
今、国際社会では、大人が悪ガキよりも強い力(すなわち軍事力)を保有している。国際社会の安定のためにはこれは不可欠の要件である(146ページ)
外交交渉においても軍事力の裏付けがなければ、ぎりぎりのところで相手を動かすことができない。軍というのは国家最後の拠り所である(147ページ)
真剣に論議すれば、核保有が、安全保障上も外交上も、いかに有効かということが立ち所に理解できる。(270ページ)
というところ。
《いざというときにはアメリカに「核の発射権限」を引き渡してもらう》というすごい提案について書かれた部分もあります(273〜274ページ)が,ここは本書のキモ中のキモなので,引用するのははばかられます。でも,本当にすごい考えなので,これはぜひチェックしていただきたい。“軍”の現場で指揮を執っておられた方の文章ですので,特に意識されていなくても「その世界」の雰囲気なり常識的考えが伝わってきます。
リーダーシップに関する部分などは,サラリーマン必読です。部下を腐らせないということに,いかに上司が気を遣わなければならないか,強調されています。「死ぬかもしれないけど,この仕事やってきて」と命令するんですからねえ,それを部下に受容させるためには,部下との関係や組織の雰囲気づくりなどに相当配慮がなされていないといけませんよね。自衛隊さんは,ここだけで「研修事業」を立ち上げられそう。航空会社の客室乗務員の方々が「接遇・マナー」などの研修をするみたいに…。
ちょっと話が横にそれましたが元に戻って。本書に書いてあることは,なるほど,こういう考えは確かに有力だろうなあと思いました。人間の普通のあり方―やられたらやり返す,やられる前にやるのが有効―そのものですから,実にわかりやすい。でも,それはやめよう,平和主義で行ってみようという壮大な実験に取り組んでいるのが日本(およびその国民)の面白いところなんじゃないですかね? と私は思っています(みんな自分で選んで,この「平和主義」の国に生まれてきたわけでもないのですけれど)。まあ,今後,どういう方向に振れるかはわかりませんが,国家の基本に関するこの問題については,右でも左でも,ともかく「無関心」でなく,マジメに考えることが大事ですよね。
頭にもハートにも刺激的な,いい読書ができました。よかった,よかった。
|