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『究極の経営』北畠謙太郎(090531)
著者の北畠謙太郎さんは,ソフト開発会社・メディアファイブの代表取締役。1960年生まれですから私より2つ年下なんですかね。『至高の学習法』を世の中に提案している企業の“元締め”。
■『究極の経営』(北畠謙太郎/メディアファイブ/本体:1,300円)
「究極の経営」というすごいタイトルですが,根本にある理念は,個人としての社員も社員の集まりである企業もハッピーになることを考えて日々行動しようという当たり前のこと。こういう考え方(というか建て前というか)だけならよく聞きますが,本書で最も驚かされるのは,実際にメディアファイブさんの社内では,『則天』というソフトを使ってその理念をシステムに組み込んで,現実のものとして着々と育てている(著者の北畠氏は「耕す経営」なんて,二宮尊徳さんみたいなこともおっしゃっています)という話。これには感動。たとえば,ソフト上で社員の誰もが個々人の業績・提案・検討の様子や販売活動などが見られる…など。ソフトのデキは私にはわかりませんが,この考え方と実践が素晴らしい。一読の価値アリです!
社員にとっては,自分が組織内で尊重されていること,いつでも役に立つ場面があること,それが正しく評価されることが大事。小さな子供が親に「見て見て」とせがむ,あれは,一生ココロから消えないと思ったほうがいいですよね。誰かに見ていてほしいし,特に会社では,生活(給与)にも直結するんで,人はその傾向が強くなりますよね。で,ゴマスリなんてのが横行したり,能力主義・成果主義なんていわれる昨今は,部下を育てないほうが自分のためになったりしてイヤな感じなんですね。でも,『則天』のような社内で公開されたシステムがあれば,ゴマスリしかできない人は,その実力が誰の目にもミエミエになってしまうわけなんですねえ。愉快であります。平等だ。結構,結構。
このような仕組みは農耕民族からスタートした日本人の組織にはもともと備わっていたものであり,これを改めて見直そうというのも北畠氏の重要な主張。たとえば,私たちの祖先は,組織全体で100俵の収穫があったときと70俵しかなかったときに,それを皆が納得のいくような形で分配して,景気がいいときも悪いときも,組織としては健全な協力体制を維持して,悪いときは皆が一丸となって現状打開に取り組んできたハズじゃん,ということですね。ちょっとキレイすぎるかもしれませんが,こういう,子供にもわかるようなシンプルな信念(だから浸透しやすい)が北畠氏にはあります。
組織や社会がこうなっていると,社員間・構成員間でのフォロー・サポートも自然と行われるようになるでしょう。全体の利益を増やすことが皆の目標となるんですね。ゲーム理論でいう「囚人のジレンマ」の“最悪の選択”の逆…,つまり構成員が協力することによって,それぞれにとっての“最適解”を選択することになるんですね。
ナレッジ・マネジメント,コンプライアンスなんていう面からも,この『則天』を生んだ考え方は参考になります。知や公正といったことは自由市場的なオープンなお天道様の下的な場面でこそよりよく育つものなんだと私は思います。こうしたことを理解している同世代の経営者がITを生かして,組織ひいては社会のシステムが明るく望ましい方向に行くような「仕掛け」をつくっている,こう思うとメチャメチャ興奮しますねえ〜。まさに究極の経営…と言っていいんじゃないですかね。ま,ずっと追いかけっこだから「極まる」はずはないんですけれども,めざす方向は正しいという意味で。ちなみに,漱石を想起すると「則天」の続きは「去私」なんですが,北畠氏は,そこまでは書いておられません。でも,下のようなことは書いておられます。
今、日本人がビジネスにおいて日本的経営を見つめ直し、ITをフルに活用すれば、私は、日本は絶対平和を理念とする通商国家として、すばらしい極になると確信しています。(261ページ)
アメリカでもヨーロッパでも中国でもイスラムでもない,平和でユニークな極になりたいものですねえ。本当に…。これを,安倍シンゾー君とか中山タロー衆院憲法調査会会長に聞かせ(読ませ)たい。
そうそう。本書は,本文の間に「孫子の兵法」から学ぶコーナーや,「旭山動物園の奇跡」「玉川温泉で道を究める」といったコラムもはさまれた,なかなか凝ったツクリです。ソフト開発者の本能なんですかね? 読者を飽きさせないようにという配慮が感じられて,これも結構でございます。
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