『ナース がん病棟の記録』ペギー・アンダーソン/中島みち訳(090125)

 なぜこの本が我が家にあったのかさっぱりわからない。でも,この本を買うと思われるのは,わが家では私しかいないんですねえ。私は小林光恵さん宮子あずささんのほぼ狂信的信者なんでございます。

■『ナース がん病棟の記録』 (ペギー・アンダーソン/中島みち訳/時事通信社/定価:1,600円)

 これ,かなりの名著です。ナース業界では有名なんですかねえ? ぜひそうであってほしい。

 私は歳を取ってボケたときに,排泄とか性的な部分でマトモじゃなくなるのが本当にコワイ。だもんで,それに関わる本は結構マジメに読んできました。

 「多くの人が直腸のあたりで性的満足を得ることも事実です。ホモの人たちもその方法でオルガズムを得るのです。異性との間でも同じです」(167ページ)

 「リューマチ様関節炎は特に女性に多く(中略)性交の体位をも含む性体験の話をしなければならない」(171ページ)

 このあたりはほんの「サワリ」。こういうナマナマしいことを考えるのが看護師さんたちの日常(まあ,科にもよるけど…)。普通の人はこういうところは,避けようと思えば避けられるけど,看護師さんはそうはいかない。女性器からウミが流れ出るような病気もあるそうです。切ない話で頭がおかしくなりそうです。マグダラのマリアはそういう病気だったんでしょうねえ。アタシはホモでもないしリューマチでもないけれど,そういう悩みを持った人が周囲にいるかもしれないとは承知しておきたい。

 本書を読むと,なるほど病人はイロイロであって,その人達をケアする看護師なるプロフェッショナルは,かなりの水準でそれらに対応する準備ができていることがわかります。でも人間だから当然耐え難いこともあり,しかし,耐え難い場面でもプロとしての振る舞いができる,と,そんな話。

「彼は亡くなったほうが,ずっと楽なんですよ。彼は地獄の苦しみを味わってきました。でももう苦しみは終わりました。だからといって,あなたの傷みまで取り去ってはくれません。残された人々こそ,苦しみ続けていくのですから。でも,お兄さんは,今は安らかです。少なくともあなたには,そのことがおわかりでしょう」(342ページ)

 こうしてゆっくり読むと,何が言いたいのかよくわからない感じですが,アンチャンは死んでよかったんだ,それを受け容れましょうね,ってな話でありましょう。愛する人を失ったどん底気分の人に,普通こういうことを言えますかねえ? 手を握って一緒に泣くことすら,アタシにはできそうにありません。父が亡くなったとき,私と弟ができたことは母の横で立っていたこと。母が私たちにしてくれたことは,黙って私たちの横に立っていてくれたことであります。

 でも,ナースには,こんなことを言って,場を収めなくてはいけないときがあるんでしょうねえ。


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