『お楽しみはこれからだ PART5・6』和田誠(090124)

 自分で言うのもナンですが,私は同年代の普通の人より「古い映画」に詳しい。何故かというと,この和田誠さんの『お楽しみはこれからだ』シリーズを愛読し,実際に池袋文芸座で作品を見ているからであります。35年も前からの話。『望郷』とか『巴里の空の下セーヌは流れる』など,私は映画館で見たんですよ〜。

■『お楽しみはこれからだ PART5・6』(和田誠/講談社/本体:各1,456円)

 14-5歳頃の私は,自分のスポーツマンとしてのデキや通信簿の成績にはそこそこ満足しておりましたが,音楽だの美術だの技術の成績はよくありませんでした。そんなとき,この『お楽しみは〜』シリーズに出会ったんですねえ。映画の技術的なことは全然わかりませんが,この映画でこんなシャレたセリフがあったということをきっかけとして,和田さんがいろいろなことを語ってくれる本に出会って,生活に明らかに厚みが加わりました。映画ってこういうふうに楽しめるのかと勉強になりました。若い頃には,こたつでオジサンの話を聞くような,今は,飲み屋のカウンターでオジサンの話を聞くような,そんな感じで和田さんにイロイロ教えてもらっております。

「君と結婚していない男たちのことを考えずにいられない」(PART5『我等の生涯の最良の年』/182ページ)
「君は素晴らしい。大量生産するべきだ」(PART5『我等の生涯の最良の年』/182ページ)

「盗みはいけないことだ。だが必要なものがあるのに金がない時は、一時借りるということにするんだ。変則ルールだけどね」(PART5『パーフェクトワールド』/182ページ)
→これを言ったのはケビン・コスナー。アメリカの俳優さんはこういうセリフを言うのが上手。ブルース・ウィリスやトミー・リー・ジョーンズだって簡単に言うでしょう。でも,日本の俳優さんでこんなセリフをさらっと言えるのは誰だろう,と考えると寂しくなってくる。千秋実さんとか加藤大介さん,渥美清,笠智衆さん…,あ,現役だと,三國連太郎さんとか西田敏行さんなら言えるかもね。寺田農さんもうまくやってくれそう。北野武さんも悪くはないでしょうが,多分こんな長いセリフは彼には無理。私は大根と開き直った大根は嫌い。北野武さんは笠智衆さんのマネをしているつもりかもしれないけど,大きな勘違い。スケールが違いすぎる。俳優・北野武はやめとけと強く言いたい。ま,北野さんの話はともかくとして,この国では,こういうヤクザなセリフを言える「河原乞食」がいなくなってしまいました。ベンツとかに乗ってるヤツにこんなセリフを言われても白けるばかりなんだな。女優さんで考えるとだいぶいいですねえ。かなり候補が挙げられますが,アタシは第一に根岸季衣さんに言ってもらいたい。

「順調なら一週間後,パクられたら二十年後に会おう」(PART6『地下室のメロディー』/14ページ)
→ジャン・ギャバンがアラン・ドロンに言ったんですね。渋い。このセンは。美しいアラン・ドロンと,あまり美しくない(寛平ちゃんにそっくりな)チャールズ・ブロンソンが黙って渋がって煙草に火をつける映画とかあったなあ。さらに三船が入って『レッド・サン』という超駄作(でも私は大好き)ができたりもしました。それはともかく,アラン・ドロンの『サムライ』なんかは,あまり皆さん誉めないけれど,私はいい映画だと思います。ジャン・ピエール・メルビル監督。自分の容貌のあまりの美しさ(でも,歳で下降気味)を持てあましていたアラン・ドロンを,うま〜く生かしてくれましたよね。北野ブルーとか言いますが,私はそれを言うなら「サムライブルー」が先だと思います。さらに言えば,音のない「サムライサイレント」とでも言っていい演出は画期的だったようにも思います。映像だけあって音がしない。その緊張感がすごかった。昔の記憶からの印象なのでメチャクチャを言っているかもしれませんが…。リノ・バンチェラとかジャン・ポール・ベルモンドとか不細工な男が,アラン・ドロンと一緒にいると引き立っちゃうじゃんかという不思議な体験もしましたねえ,あの頃は。

「君の噂は聞いている。足跡をたどると墓場だらけだそうだ」(PART6『荒野の決闘』/48ページ)
→ヘンリー・フォンダのワイアット・アープが,ビクター・マチュアのドク・ホリディに言ったセリフだそうです。恥ずかしながら私,この作品は見ていない。実は私にはヘンリー・フォンダアレルギーみたいなものがあって,あの大きな美しい目が苦手。「あたしは正義」的な人が嫌いなのはそうなんですが,ヘンリー・フォンダさんは,もっとずっと謙虚でそんなオシもない。まさに良心のカタマリのような気がするのです。だもんで,私のような男はとても相対できない。半径2メートルより外にいないと,ご迷惑をおかけしてしまうと,そんな気がしちゃうんですな。偏見のカタマリみたいなジョン・ウェインさんとか,ライフルを持った猿のわくせえ,便ハーオヤジ,あ,チャールトン・屁ストンさんなら,私はミーハーの本領でちっとも臆さないで会えた気もするんですけどね。

「お前は意気地なしだ」
「おかげで長生きしている」
(PART6『マーベリック』/66ページ)
→これ,メル・ギブソンとジェームス・ガーナーのやりとり。しびれますねえ。

「金がすべてじゃない」
「腹減ってないときはな」
(PART6『地平線から来た男』/70ページ)
→これは,ジェームス・ガーナーとジャック・イーラムのやりとり。爆笑。この映画では,あのライフルマンのチャック・コナーズも出ていて,こんなことを言う。

「女には不変の性質がある。それは変わるということだ」
→漢字で見ると可笑しさ倍増。「うそをついたことがないというヤツはうそつき」みたいな真理であります。実に洒落てますよねえ。「へらずぐち」なんて言うけど,智の無限の出口だなあ,「減らんで,よろし」とか思いますなあ〜。人にもよりますが…。

「男がお尻をさわるのは世界の共通言語ね」(PART6『愛の泉』/90ページ)
→そーなんす。でも,昨今,これは当然犯罪でありまして,世の男は大変困っているのであります。オンナコドモにはわからない。男という性は,可能な場面であればいつでも生殖活動をするようにプログラムされているんです。女性は月イチの区切りがありますが,男は多分,12歳ぐらいからずっと常時放出欲求というか膨満(この場合,チンと言ったほうが面白いですが)感と付き合って行くのであります。私は高校生の頃,バスに乗っていて,ものすごくきれいな女性を見て,ムスコがパンパンになって困ったことがあります。そのとき「俺は野獣なんだ」と心底思いました。上原謙さんが70歳を過ぎてお子さんができたとき,女性のインタビュアーは「お元気で何より」とか言っていたけれども,私は70歳になっても性の問題があるのかよと,暗澹たる気分になりました。男は相当長い間,女の子のお尻を触ったりして,どこかでそれに見合った放出をしていくんですよねえ。あ,ちょっとシリアスすぎか。でもまあ,「オヤジの性」なんて話はそうそうないので,残しておきますね。「便秘が身体によくないのと同様,満タンの金玉はイカン」と,あえてわかりやすくお下品に言っておきましょう。

「正直に生き,貧乏で,道ばたで死ぬ。ブリキの星のために」
「あなたはハンサムで肩幅も広いわ。でもそれだけでは男にはなれないのよ」
(PART6『真昼の決闘』/94ページ)
→『真昼の決闘』に出てくるセリフ。うー。私は全然記憶にありません。というのも,これはゲーリー・クーパーとかグレース・ケリーのセリフじゃないんですね。ブリキの星は保安官バッジのこと。「それだけでは男にはなれないのよ」なんてね,いいセリフだ。男にこんなことを言う女も嫌いじゃない。アゲマンだ。こいつは。私は父や伯父叔父などから男って…と学んできたわけですが,さすがにね50歳にもなれば,男の中の男ではないけれどオラ男だぞ…なんて確信は持てるようになりました。確かに,私の知っている“男”達は,ブリキの星のために生きて死んでいきましたな。これはオフクロさんやカアチャンにはわかりづらい。でも,オレと弟,息子にはわかりやすい。オヤジはあっちに行ってしまったけれども,私と弟と息子は,オヤジからブリキの星をもらっており,アタシはそのブリキの星に殉じるわけなんですな。

「自分を好きになった方がいい。長くつき合うんだから」(PART6『底抜け大学教授』/128ページ)
→ジェリー・ルイスのセリフ。そうかあ,古いんでしょうが,ジャック・レモンとかウディ・アレンとかもこういうことを言ってくれそう。わが国の“お笑い”な人たちの底の浅さが悲しいねえ。こういうギャグを狙ってほしいわあ。「死ぬなよ。生きてるうちは」なんてのも,私のツボにはまるけど。

「女と酒は似てる。どっちもくだらないが、ないと生きられない」(PART6『拳銃の町』/224ページ)
→すみません。これは女性蔑視的なヤバイセリフだとは思いますが,「どっちもくだらないが、」をないとすれば,酒飲みで女好きの男から言わせると,まったくそのとおりなんでございますね。「女と酒は似てる。ないと生きられない」

  


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