『趣味・教養を「武器」に変える 和田秀樹の“最終最強”知的生産術』和田秀樹(080912)

 和田秀樹さんの本を読んだのは『数学は暗記だ!』『バカの人』以来。和田さんの文章はいつも実に明瞭,痛快。本書の心理学を踏まえた「知的生産」に関する記述も(毎度のことながら)非常に参考になりました。高瀬淳一先生の『できる大人はこう考える』で学んだことに補強ができました。

■『趣味・教養を「武器」に変える 和田秀樹の“最終最強”知的生産術』(和田秀樹/毎日新聞社/本体:952円)

 以下,自分なりにまとめた覚書(かなりの分量になりました)から,特に印象に残ったところをいくつか挙げておきます。正確な引用でない部分も多々ありますが,少しでもご参考になれば幸いです。

■まえがき
◆私の人生の大きなテーマの一つに,賢くなりたい,知的な人間でいたいということがある。(3ページ)
→これが第一文。和田さん,エライ!
◆1999年の国際的な調査(国際教育到達度評価学会による国際数学・理科教育調査)では,中学2年生の41%が学校の外でまったく勉強していない。塾にも行っていないということである。そして,意欲格差といわれるくらいで,社会的階層が低い家の子供ほど,勉強時間も短いし,上昇志向もないという。自分の成績で満足している割り合いも,下の階層の子供ほど多いという。(3ページ)
→和田秀樹さんの新刊の『意欲格差』(中経出版)の広告を最近見ましたねえ。そういえば。ま,それはともかく,それにしてもこの文章だと,国際的にそうなのか,日本の話なのかよくわかりませんが,その後の文章からこれは日本の話。私も少しわかります。ウチの子供たちの小学校や中学校の同級生の中には,かなりキビシイ状況(中学生で九九ができないとか)の子供がおりました。そして,そういう状況の子供の親は「生活の危機」や「夫婦の危機」に直面しており,まさに子供の面倒を見るどころでなく,したがって「子供の成績に満足」というよりも気にしていられない状況で,そして子供は親が問題視しないがゆえに自分の成績の悪さを「問題」と思わず,その「成績で満足している」というような感じだったのでございます。国際教育学会の機関誌『クオリティ・エデュケーション』の覚書と一緒に『京都大学経済研究所 教育経済学(漢検)寄附研究部門 活動報告書(2007年4月〜2008年3月)』についても覚書をしておいたのですが,その中で山田昌弘教授が,「子どもの認知的能力の差というのは親の家の本の量とか,親が知的な会話をするかどうか,親がコンサートや展覧会に連れて行ってるかということで決まってしまう」と書いておられたことなど,思い出しました。

■ Part1 “最終最強”の知的生産術
EQ(感情知能指数)では(1)感情のコントロール能力,(2)対人関係能力,(3)自己動機づけ能力が見られるが,このうち,私(和田氏)が最近大切だと感じているのは,自己動機づけ能力である。いくら素質があっても,いくらいい勉強方法を知っていてもやる気がなければ何にもならない。逆に長い人生,やる気を維持できれば,いつかは成功できる可能性は低くない。あきらめても得をしないからあきらめずに頑張ってみる。ダメなときも自分がばかだからと考えるのでなく,やり方が悪かったと別のやり方を試してみる。この姿勢があなたを変える。(25〜26ページ)
→くうぅ〜。これは染みますねえ。エジソンは失敗と思わざるを得ない状況のとき,「これで,この方法ではダメだということがわかったのだから失敗ではない」というようなことを言ったという話をどこかで読んだか聞いたことがあります(かなりあやふやな記憶)が,そういうたくましさがあれば,明るく楽しく生られそうな気がしますねえ。
◆問題発見能力が必要とされる時代。その際に,必要な能力を私は知的体力と呼んでいる。知的体力は3つの要素からなる。(1)仮説や提案をいくつも思いつける知性。(2)あれこれと試してみる体力。経済的な力も含まれる。(3)なかなかうまくいかない際に,それでも続けられる精神力。(50〜52ページ)
→知的体力ってのは,なかなかいい言葉ですねえ。すんなり「感じ」が伝わってきます。

■ Part2 「デキる社員」になる術
◆最近の精神医学や心理学で注目されている考え方に,型から入る,行動レベルで考えるというものがある。長く人間の心と向き合っていると人の心の中など,そう簡単にわかるものではないし,そう簡単に変えられるものでもないと痛感する。一方で,行動のほうは変えられる。不思議なことに多くの場合,行動のほうを変えてみると,心のほうも変わっていくものだ。このように人間の心ではなく,行動を変えるというアプローチは精神医学の世界では行動療法と呼ばれる。もっとも多用される心理治療(薬を使わない心の治療)となっている。(70〜71ページ)
→これ本当。凹んでいるときでも,胸を張って肩とあごを引いてツカツカ歩くと,だいぶ回復した気がします。「笑ってみ」と鏡の前で自分をハゲますのも結構効果があります。

■ Part3 ビジネスマンのメンタルヘルス
◆計算をすれば脳が若返る,音読をすれば脳が若返る。脳は歳をとっても若返る。脳年齢という発想はばかにできない。(118〜119ページ)
◆歳をとって衰えるのは,使わなかった際の能力。高齢者が入院して天井を眺めるような生活をしていると,すぐにぼけたようになり,そのまま治らないことさえある。(122ページ)
→これは高齢な方には是非とも伝えたいお話。
◆アメリカ現代精神分析の世界でもっとも人気のある理論家のコフートの考えでは,人間というのは,心理的な依存抜きでは生きていけないとされている。コフートに言わせると,人間の発達というのは,依存からの自立ではなく,未熟な依存からより成熟した依存への発達である。(134ページ)
→こう言ってもらえると,随分気が楽になりますね。多重依存症の私としては…。(^_^;)

■ Part4 ビジネス脳を鍛える読書術
◆物事を「気にしない」こと,これも大切なスキルだ。鈍感力があれば,知的体力も身につくはずだ。(162〜163ページ)
→いろいろな本が紹介されていますが,これは『鈍感力』(渡辺淳一)の紹介のところで出てきた文章。

 当然ですが上記は本書のごくごく一部。想定されている読者はビジネスマンでしょうが,ビジネスマンだけでなく,カルチャースクールや受験勉強などで何かを学んでいる方にはぜひオススメしたい。「勉強のコツ」「表現のコツ」という授業はなかなか受けられないし,受けるとしたら信頼できる人から受けたいですよね。私は和田秀樹さんを信頼しているので,わが家ではまず高校3年生の二女に読ませます。


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