『大文字 Vol.29 2008 Summer』弁護士法人みやこ法律事務所(080903)

 古くからのご縁があって,京都にある弁護士法人・みやこ法律事務所さんより,正月と夏にこのLawyer's Newsletter『大文字』を送っていただいています。ほとんどの記事は,弁護士の皆さんが現場で感じておられることなどをまとめたもの。毎度大変勉強になるのですが,今回は特にそれが多かったので覚えておきたいところを,ざっと私なりに覚書。

■『大文字 Vol.29 2008 Summer』(弁護士法人・みやこ法律事務所)

◆被害者等による少年審判の傍聴について 大槻純生
・本年(平成20年)6月11日,少年法の一部改正法が成立。殺人や強盗致死傷,危険運転致死傷などの一定の重大事件について,少年が12歳未満の場合を除いて,被害者や遺族が少年審判を傍聴することを認める制度が創設された。
・これは昨今の,犯罪被害者等を支援する体制を強化し,被害者や遺族の権利利益の保護を図るという流れに乗るものである。この流れ自体は悪くはない。
・ではあるが,今回の「傍聴」については,被害者等が審判を傍聴することになれば,審判廷で少年が被害者等を強く意識して萎縮することが予想される。また,裁判官による,少年の心情に配慮した発言や教育的発言などが控えられることも考えられる。
・被害者らの傍聴を許す改正法の是非について引き続き議論を行って必要な改正(廃止も含めて)をするべきではないか。
→刑法とか刑事訴訟手続とか,一般人にはあまり関係がないような気もしますが,たとえば「光市母子殺害事件」の裁判の節目節目で垣間見える状況を頭に浮かべるだけでも,このような問題はそう“遠いところの話”ではないと思われます。

◆ハラスメンツとその規制 長尾治助
・いわゆるセクハラ(セクシュアル・ハラスメント),DV(ドメスティック・ヴァイオレンス)については立法がなされている。今後はパワハラ(パワー・ハラスメント)を含めたモラハラ(モラル・ハラスメント)に関する立法が考えられる。
→これらを「いじめ対策法群」と考えると,本質を見失ってしまいそうです。これらの法の根っこは,基本的人権侵害への対応ですよね。これはしっかり押さえておきたい。
・加害の多様さや被害の深刻さを考えると,法的規制を必要とする領域がなお広く残されているのではないか,気になる。被害者支援策を真剣に検討すべきであると思える。
→不勉強で情けないですが,“加害の多様さや被害の深刻さ”というのがよくわかりませんでした。弁護士さんは現場でいろいろご覧になっているでしょうから,積極的にマスコミなどに情報を流していただきたいと思ったことでした。身近な問題だと思えれば,世の中は動くと思うんですけどね。

◆相続あれこれ 大高友一
●相続争いが増えている原因:
現在の均等相続制が万能というわけではない。(1)被相続人の財産形成への貢献度などが相続割合に反映しきれていないのが実情かと思われる。そして,この実質的不平等が相続争いの原因の一つ。(2)権利意識の高まりと「家」意識とのズレも相続争いの原因…たとえば,長男には親の扶養の義務を負ってほしいが,遺産は兄弟平等にもらいたいといったこと。
●相続争いの起きやすいパターン
(1)遺産の内容に問題がある場合:〔例〕4,000万円の土地と400万円の預金を配偶者と2人の子の3者で相続しなくてはならなくなった場合。配偶者2分の1(2,200万円),子4分の1ずつ(1,100万円ずつ)だが,土地を売りたくない者と,土地を売ってでも相続させろという者の間に争いが起きる。問題は遺産の大半が分割不能であったこと。生前から預金を増やしておくとか,生命保険をかけておくとかすれば争いは防げる。
→これって,常識なんでしょうか? こんなこと考えたこともありませんでした。義務教育で教えてほしいわ。で,孫がまたおじいちゃんとかおばあちゃんに教えるというのが,円満でいいです。
(2)人に問題がある場合:相続人・相続人の配偶者が強欲…など。
(3)被相続人に問題がある場合:変な遺言をする,生前各人別に,一貫性のない話をするなど。
・相続争いの解決は難しい。お互いの「これだけもらえてしかるべきだ」という常識が衝突する。最終的に「勝ち負け」がはっきりする。しかし,裁判所に判断を委ねた場合は,多くの場合,双方に不満を残す。
・相続争いを防ぐには遺言書を残すのがいい。できれば,あらかじめ相続人となる者を交えて生前に財産の分け方について話しておいてそれを踏まえて遺言書をまとめるとよい。遺産の内容に問題がある場合は,生命保険に加入して万一の時には,一定の現金が相続人の手元に残るようにしておくことも有効。
→これ,若いうちに知っておきたかった。私が死んだときに,子供一人一人に1,000万,ツマに2,000万とか行くようにしておけばよかった。子供が生まれるたびに,私が死んだときに保険金を受け取れるようにしておくべきだった。実際,そんな余裕が家計にあったのかどうかはわからないけど。痛恨! 普通,こんな計算はしないと思いますが,誰かに教えていただきたかった。家族に迷惑ばかりかけて生きてきて,最後の一発で,何もかもチャラにできたかもしれないものなあ〜。「いろいろあったけど,お父さんは,やっぱり私たちのことを考えていてくれたのよね」なんてね,言ってもらうのね。よく生きた人はさらに好感度をアップさせられるわけで,これは皆さんにおススメの作戦。

◆成年後見制度を巡る現実的課題 〜制度施行から8年を経過して〜 小田宏之
・厚生労働省研究班が発表した推計によると,全国の認知症高齢者の人数は,2005年の約205万人から,2035年には2.2倍にあたる約445万人になる。
・こうした高齢者等の権利擁護を図るための法制度として「成年後見制度」がある。
・この「成年後見制度」は非常に優れた制度ではあるが,現実には問題も当然ある。
・たとえば,ケースにより,当該高齢者の後見人は医師から手術や延命措置の同意を求められることもある。また「身元保証人」とか「連帯保証人」となることを求められることもある。
・弁護士が後見人等になった場合,法的対処になじむことには対応できるとしても,介護・福祉サービスの選択・利用といったことについては,適切な対応がとれない場合もある。一人でも多くの方々に「担い手」として参加していただくことをお願いせざるを得ない。
→この話はショックでした。たとえば445万人をカバーするにはいくつかの分野の専門家が必要だとすると,各分野で“患者のかけもち”はするとしても,それなりの人員が必要になります。そういう算数,考えてますかねえ,厚生労働省…心配。


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