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『政権交代の法則 ――派閥の正体とその変遷』草野厚(080903)
草野厚先生の新刊。草野先生のご著書を拝読したのは,『解体
国際協力銀行の政治学』以来,約1年ぶり。角川oneテーマ21シリーズでは,『歴代首相の経済政策 全データ』以来,約3年ぶり。
■『政権交代の法則 ――派閥の正体とその変遷』(草野厚/角川oneテーマ21/本体:705円)
本書はまず,文句なく「おもしろい」です。本書のサブタイトルを見て“「派閥」についてはもうだいたいわかってるし,今さら取り上げるテーマとは思えないんですけど…”と思う方が多いかもしれません。たとえば,政治家は“政策で勝負するべき”であって,“親分―子分”とか“仲良しクラブ”ではなく,政策ごとに“それぞれの政治的信条”に照らし“是々非々”でグループを結成して動くべきだ,「派閥」なんて時代遅れで検討する価値はない,なんてのが,一般に通りがよいのではないでしょうか。でも,先生は次のようにおっしゃいます。
民主党に自民党と類似の派閥が誕生するかどうかは、政権にどれだけ近づくかどうかにかかっている。代表に選ばれることイコール首相という道が現実のものとなればなるほど、仲間を、支持者を増やす、増やしたいという欲求にかられることは当然だろう。
複数の政治家が名乗りを上げたならば、まず二〇名の推薦人確保のために、日頃の同僚議員への働きかけが重要ということになる。この点からすると、民主党に一般的にイメージされる派閥が登場することは時間の問題だ。(179ページ)
いきなりの引用でわかりづらいかもしれませんが,「派閥」というものは,時代遅れどころか「いつもあって然るべきもの」という位置づけです。民主党にいわゆる「派閥」らしいものがないのは,何だかんだ言って,代表になっても首相になれるわけでもなく,その代表にだれかを当選させるべくおべっかをつかっても,大臣になれたり利権のおこぼれがいただけるという“蜜”もないからだという話。草野先生の口調に比べ下品な言い方になってしまいましたが,派閥については,草野先生はこういうご見解です。私は,これは当たっていると思います。
本書は新書で,たった225ページ。これだけの分量で「わが国の〈近現代政治史〉および〈近未来展望と対策〉」が語られます。55年体制以降の話です。
毎度のことながら,草野先生のご著書らしく設計がしっかりしています。勉強にもなりますし,“ドラマチックな読み物”としても十分おもしろいです。個別の記述では,私は民主党の派閥(グループ)分析とか「政権党を見定める五つの視点」が特に新鮮でした。以下,私が全体を通じていいなあと思ったこと。
・骨組みがしっかりしている
・記述にスピード感がある
・記述がスリリング(特に「はじめに」と第1章「ねじれ国会と政権交代」)
・資料がユニークで工夫されている(学生さんの協力あり。自民党派閥系譜図,日本の政党系譜図,自民と民主の派閥勢力図など)
・「派閥」による「疑似政権交代」といった大きな主題=主旋律が何度か出てきます。変な言い方ですが,草野先生のご著書は,いつも音楽を聴いているかのような味わいがあります。今回も同様でしたが,それがとても心地よく仕上がっていると思います。具体的に「ここの記述が効いているので,今のこの部分が印象に残るのだ」といったことを言えないのが残念ですが…。
もう一つだけ引用。
九三年の政変以来、日本の政界で今に至るも繰り広げられているのは、自民党と小沢一郎の戦いだということである。(118ページ)
→これは絶対忘れてはいけない視点だと思います。15年戦争…。小沢氏が民主党の代表選に出馬表明をしたその日に,自民党は首相の退陣表明をぶつけ,「疑似政権交代ドラマ」を展開することで,マスコミ=世間の関心を自党に引き寄せ,かつ,それによって民主党に関するマスコミ報道を抑えるという,なかなかしたたかな作戦(偶然とは思えない)に出た,と私は思います。
それはそれとして,ともかく自民党総裁選が始まります。それをよく味わうためにも本書は,お早めにご賞味くださいませ。(^_^) また,公務員試験を受験する人には,『歴代首相の経済政策 全データ』も一緒にお読みになることをオススメします。
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