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『[画文集]シベリア抑留1450日』山下静夫(080421)
吉武輝子さんの『置き去り−サハリン残留日本女性たちの六十年−』を拝読した後,城北肝友会・山高会長のお宅に伺ったときに教えていただいて購入したものの,ビビってなかなか開けないでいた本書をついに手にしました。
■『[画文集]シベリア抑留1450日』(山下静夫/東京堂出版/本体:2,800円)
『置き去り−サハリン残留日本女性たちの六十年−』に劣らず,本書も大変な労作・大作です。A5判・約600ページ。しっかりした製本で,厚さ45ミリもあります(上右)。カバーを剥ぐと布で表紙が覆われ,背の書名は金箔。著者だけでなく,東京堂出版さんの本書制作にかけた“気迫”のようなものも伝わってまいります。
本書の体裁は上のよう。絵はかなり細かく描き込まれています。文章はやや小さめの文字で横2段組。絵(350枚!)はボールペンで描かれたそうです。ちょっと文章を引用。
教育勅語に,〈父母ニ孝ニ〉という言葉がある。手塩にかけて育ててくれた親の恩に報いることである。軍隊では,その父母の子である兵を人間とは認めず,馬以下兵器以下の道具視した。それは『お前ら,1銭5厘でいくらでも集められるんだ』という上官の言葉に端的にあらわれていた。(82ページ)
1銭5厘。『一銭五厘たちの横丁』(児玉隆也/写真=桑原甲子雄/晶文社)を思い出します。こんなことを言われて命をかけさせられる。兵隊は消耗品。
ソビエトが敗戦国民を強制労働に従事させた,このシベリア抑留については本当に腹が立ちます。また,われわれ日本も中国・朝鮮の方などに同じようなことをしたのだと思うと,本当に表現のしようのない,絶望的気分になります。これがそんなに昔のことではないというのがまた恐ろしい。本書はそれをたっぷり教えてくれます。
国を愛するとはどんなことだったか。それから,軍隊とは何だったか。
国とは日本という土地なのか,それともそこに住む人間なのだろうか。日本人の住んでいない日本という国は考えられない。日本人を愛することが,日本の国を愛するということにならないだろうか。
次に軍隊だが,(中略)没人間,それが愛国至誠の軍隊だった。人間性のない軍隊が国を護る。これはどういうことだろう。これが軍隊の一つの顔だった。
(中略)この度の戦争は,昭和6年の満州事変にはじまり,日本は隣国の侵略をはじめた。そして正義を説いたが,実際にそうだったのだろうか。
我々は天皇の名に於いて,鉄砲玉同様に利用された操り人形ではなかったのか。私は結論は出さない。みんなでそれを考えてみることだ。(377ページ)
シベリア抑留の悲惨について事実を淡々と描き,記述される一方,国や軍隊の在り方などについての山下さんの文章の根底には激しい怒りや思いを感じます。この国では今後「愛国心」の教育をするそうですが,何だかイヤな予感。この予感がはずれることを,心から願います。
その他,いろいろなことを感じ,考えさせていただきました。山下静夫様。ありがとうございました。お疲れさまでした。
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