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『耳部長』『秘宝耳』ナンシー関(080224)
『何様のつもり』『何が何だか』『何がどうして』,『何だかんだと』『何を根拠に』に続いてさらに2冊。この週末は「怒濤の“ナンシー関”特集」だったのでございます。
■『耳部長』『秘宝耳』(ナンシー関/朝日文庫/本体:各520円)
この2冊は「週刊朝日」の「小耳にはさもう」というコーナーで連載されたものの文庫化(だから“耳”にこだわった書名なんですね)。登場人物の発言とそれが「いつ」「どんな場面」でなされたかが明記されているのが何だか小気味いい。たとえば,
「最後に聞くけどさ,あなた,ワキガ?」野村沙知代 発言 97・6・10 TBSテレビ「怪傑熟女−心配ご無用」にて。男性に縁がないと悩む三十四歳の女性に唐突に問う。(『耳部長』53ページ)
…このような案内が,2冊とも各文の冒頭に置かれています。路上観察の記録みたいで面白い。これに本文が続きます。
■『耳部長』
先の野村沙知代さんのところでナンシーさんは,こんなことをおっしゃいます。
私は,下品なものが嫌いなわけでもないし,「歯に衣着せぬ」のおもしろさもわかっているつもりだが,この種の「あけすけさ」にはどうも嫌悪感があるのだ。(55ページ)
この辺は人によっていろいろ感じることが違うのでしょうが私も同感です。女性の生理用品や入れ歯洗浄剤,トイレ消臭剤,大人のオムツ,痔や水虫・タムシ用薬品などのコマーシャルは何とかならんのですかね? 何でああいうのをテレビで流して平気なんですかね〜。勘弁してほしいわ〜。
本書からは,「ほほう」(田原総一朗/35ページ),「よろしくて?」(川島なお美/珍しく全然似てない/62ページ)と「そうかつらいか」(と前田忠明が電話で言っている図/205ページ)の3点をスキャン。
■『秘宝耳』
カバーのデザインがいいですねえ。著者名のほうが書名より大きくて目立っています。これってありそうでないことだと思います。また,地のピンク,割れた球から耳が見える小学生のアイデアみたいなイラスト,何か変でよろしいです。あとさき考えてないというテイスト。カバー装幀は出下武司さん。
(特に深夜の)テレビから流れてくる,だれにもありがたがられないというか,消費されなかった「語り」というのは,どこに行くのだろうか。そんなゴミが全部流れ着く終着の浜辺みたいなところがあるような気もする。(中略)怖い。恐山の奥のほうとかにあるかも。(189ページ)
「神の国」とか「人生いろいろ」とか「女性は子どもを産む機械」とか「35歳で…」とかね。
本書の巻末にはいとうせいこうさんの解説が載っています。いとうさんはナンシーさんのデビューの頃からのお付き合い。
ナンシーは(中略)凝縮したフレーズを次々つなぎ合わせるようなやり方で原稿を作り上げたのである。
ナンシーの文体の底にある,配管工がボルトで管をつないでいくような重々しい感触は,初期の頃からすでに存在していたのだった。
いとうさんには失礼ながら,この文章にはちと驚きました。「配管工が〜感触」,素晴らしい。異議なしであります。今回の「怒濤の“ナンシー関”特集」で,“これは流して書いたな”という文章がないわけではなかったですが,基本的にナンシーさんの書かれる文章はややゴツゴツした感じで構成がしっかりしているという印象でした。それをねえいとうさんは「鉄管の配管」って言いますかあ,すごいなあ〜。
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