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『人生で大切なことはすべて映画で学んだ』童門冬二(080216)
『人生の歩き方はすべて旅から学んだ』を拝読した際,本書と『人生で必要なことはすべて落語で学んだ』で三部作ということを知りました。そら,読んでみたくなりますよねえ。ファンですから…。
■『人生で大切なことはすべて映画で学んだ』(童門冬二/PHP文庫/本体:533円)
1990年に『人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』(ロバート・フルガム:著 /池央耿:訳/河出書房新社)という本が出たときに,「いいタイトルだな〜」と思ったことがあります。「幼稚園の砂場で学んだ」という表現にモトがあるのかどうか知りませんが,このシリーズは『人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』に学んで,タイトルがつけられたのではないかと拝察いたします。
まず最初に取り上げられているのが『生きる』です。これを冒頭に持ってこられるところがいかにも童門先生らしい。わたくしもこの作品は大好きであります。このまま『七人の侍』『用心棒』など,黒澤作品をド〜ンと続けていただきたかったですが,そうはならず,2つめの『頭上の敵機』以下,新旧・国内外織り交ぜて,多数の作品が紹介されています。
『宮廷女官 チャングムの誓い』の項。韓国ドラマに関して「韓国の『礼と家族尊重』の精神,(中略)『私事優先。仕事あとまわし(私事のためには仕事を放り出して職場をとび出してしまう)』の行動原則」…が先生の「気質にひどく合う」そうです(82-83ページ)。私も同感。
韓国の人だけでなく,日本に来ているアメリカの野球選手も奥さんの出産で帰国したりします。私はそれでいいと思います。ど〜もまだ「滅私奉公」の伝統がわが国には根強く残っているようです。有給休暇を大量に残したり,風邪や二日酔いで体調が悪くても出勤することそのものが,急ぎとか重要な仕事がなくても美徳(義務)だと信じ込んでいる人が少なくない。一方でリストラ・戦力外通告が平気で行われている現実を知りつつ,平社員レベルでもその美徳だか義務を遵守し,かつ周囲にも暗に要求するのが私には信じられない(「奴隷になったわけでもないし,小学校でもないんだぜ」と言いたい)。おっと,話が思わぬ方向に行ってしまった。もとい。
本書で私が好きなのは,ジョン・ウェインについて語られるところと,ゴッド・ファーザーについて語られたところ。ゴッドファーザーについて,
ゴッドファーザーを観たあとは,ほかの短い作品が泡のように思えて,なかなか元の感覚に戻らない。すごい映画だ。(160ページ)
…なんて書いてあります。とっととレンタルビデオ屋さんに行って借りてきて,一気鑑賞したくなります。その他,当然ですが私の観ていない作品も多数取り上げられています。
童門先生は元東京都の企画調整局長,政策室長を歴任。「ぼくは勤め先(東京都庁)で三十歳で係長になり,三十二歳で課長になった。そして四十歳で部長になり,四十五歳で局長になった」(30ページ/確か51歳で退職=覚書)というキャリア。その情報処理能力(と,それを日々成長させる旺盛な好奇心)には本当に驚きます。「ぼくはアメリカのミステリーが大好きで,二日に一冊ずつぐらいのスピードで読んでいる」(133ページ)なんて記述もあります。もう一つ。
「いままで観た映画の中でベストテンを選べ」
と言われれば,僕は躊躇なくこの『ラストショー』をその一本に入れる。(147ページ)
本書の本筋とは関係ないのですが,ファンとして覚えておきたい文章をさらにもう一つ。そういえば,本書は,童門先生にしてはかなり例外的に「個人的」なことをお書きになっているという印象です。
ぼくは太宰治が好きだ。太宰治にはいろいろ問題のある側面もあるが,そんなことはどうでもいい。彼はこう言った。
「微笑もて正義をなせ」
ぼくの座右の銘だ。(79ページ)
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