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『美しき日本の残像』アレックス・カー(080209)
『犬と鬼』(2007.11.05)に続いて,アレックス・カーさんの代表的ご著書を拝読。カーさんのご執筆の順番は,本書が先(1994年新潮学芸賞受賞)で『犬と鬼』(2002年発行)が後です。
■『美しき日本の残像』(アレックス・カー/朝日文庫/本体:2,500円)
まずはカバーのデザインが格好いい。右は亀田鵬斎「六十有余大酔書」,左はどこかの庭と建物。なかなか雰囲気があります。書は何と書いてあるのかわかりませんが…。何せ「大酔書」だし…。音楽的に文字を楽しむってなところでしょうか。
本書の内容のほとんどについては,以前に聞いた講演や『犬と鬼』からおおむね想像がつきましたが,カーさんのキャリアがわかるのが興味深かった。思い切って言うと,カーさんの文章は何だかアマチュアっぽくて,ダラダラと自分のキャリアやら知見が混ぜこぜで語られます。内容が面白いので読み進めるのは難しくなく,これはこれでよいのですけれども(それが「新潮学芸賞受賞」の大きな要素だったのだろうとも思いますし),一方で,論点が散漫になっている感じもします。
ちょっと引用。
言い過ぎかもしれませんが、日本は中身より外見を大事にすることが大い国だと思います。(中略)例えば、スーパーなどに並んでいる野菜はみんな形や色はきちんと整えられ、蝋でできたかのように完璧で綺麗ですが、味は薄く、美味とは言えません。国会の論議を聞いても、「本音」より「建前」を重要視するのがよくわかります。(59ページ)
…はい,こういうことはたいていの日本人は承知しておりますよ,と言いたい。この文はこの後「しかし外見を重んずることはマイナスばかりではないでしょう。」と続きます。こういう,別の面を見ようとするところがカーさんのいいところ。いろいろな国の文化を見てきた人らしい話しぶりが好もしい。もうちょっと。
マッカーサー元帥は「日本は十二歳の男の子の国です」という名言を残して日本を去っていきました。十二歳の男の子が現代技術の道具を手にして自然環境と遊び始めたら、やはり危険です。(266ページ)
アジアではヨーロッパのように昔の文化と自然環境を綺麗に守りながら発展した国は一つもありません。(267ページ)
飲み屋さんなどで外国人からこんなこと言われたら,(相手の体格次第ですが)「ケンカ売っとんのか,くぉらー」とか言ってしまいそう(お前ら,アジアで何をしてきたかあ〜と,お互い様な泥沼に引きずり込みたくなります)。それはそうなんですが,これはカーさんの苛立ちの裏返しで,ワザとこちらを刺激するような言い方をされているのです。カーさんの心配どおり,我が国の都心では相変わらず何とかヒルズだの高層ビルが増え続け,確かに「23区で最も緑の面積が多い」わが区,わが家の周囲でも畑がどんどんなくなっております。この流れが止まるとはまったく思えない。
残像…か。今も,都会と田舎の格差是正の方策として,日本中で東京をめざすようなことが続けられています。「○○銀座」の発想と全然変わってない…。一方,私は,地方の方から「“どうぞこの自然を大事にしてください”なんて都会人に言われることほど腹の立つことはない」という話を聞いたことがあり,それももっともだと思っております。どうすりゃいいんだかな〜。全体として現状の延長線上にはイカン状況しかないとは思うのですけどねえ〜。
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