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『診療室にきた赤ずきん―物語療法の世界―』大平健(080106)
昨年の私の読書歴の中で,最も喜ぶべき成果は,この大平健先生(『顔をなくした女』(2007.5.8)など)に巡り会えたことかもしれません。本書が目に入ったとき,迷わず購入。
■『診療室にきた赤ずきん―物語療法の世界―』(大平健/新潮文庫/本体:362円)
単純に言って,精神科のお医者さんが患者さんに,「あんたはこの話の,こういう状況と似てるんです。おわかりいただけます?」という感じで使う,童話に関するお話。童話の読み方に,いろいろ「奧」があることは,わたくしも,たとえば『世界のシンデレラ物語』(2006.8.30)などを読んで知っているわけですが,そうですよねえ,薬草ではありませんが,ご先祖から受け継いできたこうした物語が「精神的病気」の治療に役立つというのは,よ〜くわかる気がしますねえ。あるときは予防に,あるときは癒しに,あるときは治療にも使えると…。
登場する話は,ねむりひめ,三年ねたろう,ももたろう,赤ずきん,うらしまたろう,三匹のこぶた,いっすんぼうしなど。
なお,カバーの原マスミさんの赤ずきんの絵がよいです。上の写真だと足元が帯で見えませんが,赤ずきんがエスカレーターで降りてきたという図。赤ずきんちゃんとエスカレーターの組合せに,脳を揺すられるような不思議な感じがいたします。
印象に残った記述を覚書。
精神科医が患者を診る3つのポイント。(47〜59ページ)
〔1〕患者が何事かを医者に決めてもらいたがっていないか。
〔2〕患者が自分の置かれている状況を把握しているか。
〔3〕患者が自分の調子が悪くなった「原因」を尋ねたがっているかどうか。
上記の〔3〕の部分で…
(精神科には)本気で大真面目に「原因」を取り扱うやり方があります。(中略)患者の悪かった点,誰かが酷かった点を次々と明るみに出すのです。(中略)
ただ,この方法には欠点があります。時間がかかりすぎるのです。また,原因探しの過程で罪悪感と身近な人への嫌悪感が繰り返し生じます。原因探しは,一種の犯人探しだからです。(中略)
原因探求をパスしてしまう手があります。「誰のせいでもありません。運が悪かったんですよ」と言ってあげればよいのです。「偶然が重なってしまったんですね」という言い方もあります。(56〜57ページ)
私も,繰り返される多くの失敗について,真面目に考えるとあまりにもツライので,原因探しをパスするのが若い頃より上手になっております。それと近頃は,よく考えること自体を先送り,つまりパスして「本当に困ったときに考えよう」とすることが増えてきました。まあ,自分が壊れないようにする“ワザ”ではあるんですが,多用しており,どんどん逆境に弱くなってきた気もします。(^_^;)
病に倒れることや,入院することに(中略)長年医者をやってきて私は,利点はある,と思うようになりました。(中略)病気は私たちに自分を,自分の人生を見直すきっかけを与えてくれる機会でもあるのです。(127ページ)
同感です。
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