『カリスマ』佐野眞一(071223)

 佐野眞一さんの作品を拝読したのは『渋沢家三代』以来。本書はずっと以前にとっくに拝読した気になっており,今回は再読のつもりだったのですが,どうやら今回が初めてだった模様。(^_^;) あ〜,おもしろかった,っと。

 毎度,佐野眞一さんの作品には感動いたします。ともかく取材がしつっこい感じ。 それと佐野さんは,割合感動しやすいタイプの方のようなのですが,それを懸命に抑えてクールにクールに記事をまとめようとされる姿勢が素晴らしい。この本も労作です。四六判,約680ページ。厚さは約40ミリでございます。本書は,もう業界の方には常識的なものだと思います。小売・流通志望の学生さんにぜひ読んでほしい一冊。佐野眞一ファンは,もっちろん必読でございます。

■ 『カリスマ 中内功とダイエーの戦後』(佐野眞一/日経BP社/本体:1,900円)

 中内功さんの「功」のつくりは,本当は「力」ではなく「刀」です。ざっと印象に残ったところを覚書。

・「戦後,神戸から出て大きくなったのは山口組とダイエーだけや」という中内自身の名台詞がある(10ページ)
・フィリピンで戦死した日本人将兵は四十七万六千人を数えたが,フィリピン人の犠牲者はその倍以上の百万人にも及んでいた(135ページ)。
・「あのな,吉田君,泥棒というのは,つかまったヤツのことをいうんだ」(170ページ)
・ワンマン企業の恐ろしいところは,トップの自信喪失や迷いが,そのまま組織の士気や営業成績にストレートに反映してしまうことである。(236ページ)
・眠ればいつ同僚兵士に殺され自分の肉体を貪り食われるかわからないフィリピン戦の飢餓線上で,中内は同僚を信頼して眠りについたという。人間不信のなかに人間信頼があり,人間信頼のなかに人間不信がある。中内の底知れぬ虚無感とそれをつきぬけた楽天性は,間違いなくこの気の狂うような極限の体験が生みだしたものだった。(316ページ)
・衆議を尽くさせて,最後は独裁で決定する。ある意味で,独裁政治の最終形態ともいうべき“衆議独裁制”は,今もかわらぬ中内の“経営哲学”となっている。(360ページ)
・「借金と元気だけはあるんや」が近頃の口癖の中内(513ページ)

 その他,阪神大震災のときの中内とダイエーの大活躍に関する記事も印象的でした。戦後の闇市から立ち上がり「消費者主権」を訴えてきたダイエー,その盛衰は実にドラマチックです。現在,イトーヨーカ堂やイオンなどは「成功した企業」と見られているようですが,“今後も順調に行くとは限らないんだろうな”と思います。百貨店の合併劇を見ていても思いますが,経営陣は,薄氷を踏むようなつもりで慎重に組織運営をされていることでしょうねえ。まあ,小売・流通だけがそういう状況というわけではありませんが。


Google


TOPへBACK

このサイトは「目次部分」「本文部分」という2分割の画面で表示される仕様にしていますが,検索エンジン経由ですと単独のページがピックアップされる場合があります。そのような場合には,恐れ入りますが以下をクリックして,新たにアクセスし直してください。
【注】2分割で表示されている場合に下をクリックしますと,フレームの中に2分割の画面ができてしまいますのでご注意ください。その場合はブラウザの「戻る」ボタンを押していただくと,現在の画面に戻ります。
http://homepage1.nifty.com/kanen/