『神皇正統記』岩佐正校注(071125)

 ちょっとした気まぐれで買ってあった『神皇正統記』。何で北畠親房が著したとわかっているのに,岩波文庫の表題にはそれが明記されていないのでしょうか? 『世阿弥能楽論集』と同じような扱いなんだなと思えば,まあ,いいのかなとも思いますが,『神皇正統記』といえば北畠親房なので,ちょっと引っかかります。

■『神皇正統記』(北畠親房/岩佐正校注/岩波文庫/定価:300円)

 興味の赴くままに,私はこれまで,『埋もれた巨像』『天皇制の文化人類学』『ミカドと世紀末』『日本憲法思想史』など拝読してきたわけですが,この本にいちおう触れられたのはよかった。本書の冒頭は,

 大日本者神國也…おほやまとはかみのくになり

でございます。早稲田でラグビーしてた元首相,よく勉強されてたんですなあ。万世一系なんでございますねえ。「我國のみ此事あり。異朝には其たぐひなし」であります。こんな記述と,長尾龍一先生が『日本憲法思想史』で紹介してくださったようなことが,現代でも,まだ脈々と「生きている」のでありますねえ〜。

 ま,私はもちろん,同世代の山口二郎先生などと相当に近い『本当に憲法改正まで行くつもりですか?』的考えなわけでして,この辺りがヤバイとなったときには,できるだけの抵抗をしたいと思っている次第です。悪いけど「父なる天皇さん」のために命を懸けるつもりは,さらさらありません。とはいえ,もし仮に,あの可愛い愛子さんなどの子どもたちが,ピンチになっていたら,これはね,貴種だのってこととは別で,救うのが年長者の当然の役目だとは思います。

 さて,本書は,私には,実は校注があってもよくわからないところ多数。残念。私にあまりにも歴史的知識がないのが毎度のことながら悔やまれます。肝心の,後醍醐天皇や後村上天皇,足利高氏がどうなったのよ,などがすっきり読み取れない。新田義貞とか楠正成など有名人がちょろちょろっと出てくるのですが,これは扱いが軽い。「武士たる輩,いへば数代の朝敵也」(173ページ)なんてところに,貴族の親房の本音が出ちゃってると私は思います(これは言っちゃあいけないことだったろう,と思いますねえ)。

 まあ,でも,皇族・貴族・平民から見て,武士とか武官が「好戦的」に見えるのは致し方ない部分もあるのかもしれません。まして現代の私たちの場合は,先の大戦で「軍の暴走でヒドイ目にあった」という,国民共通の歴史認識があります。武士には要注意。自分達を「もののふ」とか言う政治家には特に注意したいと私は思いますねえ。

 それとね,一方,『埋もれた巨像』で書かれた構造ですが,本当に,天皇家に,いかに藤原家の女性が送り込まれていたか,には驚きます。天皇の母って,やたら藤原さんでございます。「もののふ」は結構あさましいんじゃないかな。天皇をうまく使って現世利益を得るのね。


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