『サブリミナル・マインド』下條信輔(071118)

 「人は自分で考えているほど,自分の心の動きをわかっていない。人はしばしば自覚がないままに意志決定をし,自分のとった行動の本当の理由には気づかないでいるのだ。」と,カバーの袖に書いてあります。それはそうでしょうし,毎度「意識的・意志的」に行動してたら疲れちゃうジャンと直観的には思います。ただ,よくいわれる「サブリミナル効果」のようなことで,意志を操作されたくはないんだよな〜…なんてことを思って,本書を手に取りました。

■『サブリミナル・マインド』(下條信輔/中公新書/本体800円)

 いくつか覚書。大学の講義のように,下條先生が「キメのセリフ」を載せてくださっているので引きやすい。

 人は自分の気持ち・行動の本当の理由を案外知りません。そこではたらく過程は非生理的できわめて認知的でありながら,それでいて意識的・自覚的ではありません。意識的過程は結局,意識的過程をしか(直接には)知り得ないのです。(61ページ)

 人の心とは,完全には統合されていない多元的なシステムなのです。つまり,心とはひとつの心理学的実体ではなくて,いくつかのサブシステムからなる社会学的な実体なのです。(80ページ)

 人は,自分の認知過程について,自分の行動から無自覚的に推測する存在である。(89ページ)

 これだけでも,まあそうだとは思っているけど,「自分」ってのはかなりアヤシイものですよねえ。さらに話はちょっとずれてこんな話も出てきます。

 人を普通に拳銃で殺せば間違いなく重い罪に問われますが,十人以上連続的に殺して,その死体とセックスするか,食べるか,それとも皮を剥いで飾るか,とにかくできるだけ残虐で常軌を逸した行動をとればとるほど,無罪を勝ち取るチャンスも広がるのです。(287ページ)

 ぞっとしますねえ〜。病気なら無罪という,“「症候群」症候群”なんて造語も出てきます。

 個人のあり方があやしいものなので,じゃあどうすればいいのよ,ということについて,本書では結論的な記述はありません。現在の知見はここまでというところで話は終わっています。本書は1996年10月初版。私の手元にあるのは2002年5月の7版。その後の知見はどうなっているんでしょうかねえ〜。知りたいなあ〜。


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