『子どもはことばをからだで覚える―メロディから意味の世界へ』正高信男(071117)

 「読書の心理学・子育ての心理学」がおもしろいな〜と思ったのとほぼ同じ時期に,わたくしは,『0歳児がことばを獲得するとき』の正高信男先生の,このご著書とも巡り会っておりました。

■『 子どもはことばをからだで覚える―メロディから意味の世界へ』(正高信男/中公新書/本体680円)

 お母さんの胎内にいるときから,子どもは「言葉を発する」準備をしているんですねえ。おもしろいなあ〜。以下,どかどかと覚書。

・赤ちゃんが外界とコミュニケーションをはかろうとする際,周囲から入力される情報は最初,メロディーとしてやってくる。(1ページ)
・(赤ちゃんは)メロディーから音素配列に注目しだし,それとともにメロディーの要素は切り捨てられていく。(中略)どういうメロディーが伴おうと「バナナ」は同一であり,同じようにうたわれても「リンゴ」とは違うことが理解されたとき,(中略)子どもは特定の文脈から切り離され,独立したことばの基礎となる単語をみずから産出する素地が真実ととのうのであろう。(58〜59ページ)
・赤ちゃんが喃語(なんご)を発しはじめるようになるということは,音声言語上ではたいへんな大変化である。(66ページ)
・クーイング(アーとかクー)→過渡期の喃語(アーアーアーなど。「音節が複数」)→規準喃語(バブバブ,ダダダなど「音節が複数」かつ「子音+母音」)という音声発達の図式がある。(66ページ)
・笑い声をたてること自体が,子どもにとって大切な発話訓練の一環である。(71ページ)
・(赤ちゃんは)最初,下肢を何度も繰り返し蹴りながら笑う(71ページ)。
・(赤ちゃんが)空をリズミカルに足で蹴る運動は,生後五〜六カ月にピークを迎える。それからのちは,(中略)今度は手を用いた反復動作が行われるようになる(73 〜74ページ)。
・大人並みに子音が発せられるようになると,発声と手の運動との同期は,急速に喪失する。同時に笑いと手の同期も,ぱったりと消え去る。(78ページ)

・一つの語彙を伝えるには,当のことばの指示対象が眼前になくてはならない。(中略)周囲の大人の指示行為に理解が及ぶようになったとき,子どもは一般に,「三項関係が形成されるようになった」と発達上,呼ばれることが多い。(97ページ)
・子どもが身体的動作による指示行動(たとえば「指さし行為」)を行うようになるかどうか,ということが,言語習得の上でたいへん重要な意味を持つ。(97ページ)
・(子どもは)身体で対象物とかかわるなかで,語の意味する内容をいわば,「体得」していく。(131ページ)
・(マクニールによれば)ことばの背後にある話者の心的表象は,同時にジェスチャーとなって常に具現化している。(135ページ)
・子どもが単語のシンボリックな意味を理解するにいたる過程を考えてみると,(中略)なにはともあれひとまず発話行為のイメージ的側面をとっかかりにせざるを得ない。それは,ことばの指示対象を身体的に把握することにほかならない。身体でわかるとは,単に自分の身体を用いるにとどまらず,大人からの教示を受ける際にも,相手のジェスチャーに影響されるということである。(135〜136ページ)
・「行く」と「来る」の使い分けといった視点動詞(あげる/もらう,売る/買う,など)のマスターはむずかしい。これは,どのようなことばも「からだ的思考」の介在なしには習得不可能という事実を反映するもっとも如実な事例である。(169ページ)

 上記は健常の子どもの場合についてだけ,抜いたもの。本書では障害のある子たちの過程などにも触れています。実験の模様(ねらい,方法など)がかなり取り上げられており,これが門外漢には結構ツライ。まあ,そこをちゃんとしておかないと「厳密さ」を欠いてしまうのでしょうけれど,なるべく細かいところは飛ばしてもらえるとありがたいと思ったことでした。

 本書は心理学を勉強している息子行き。息子には,実験に関する記述は参考になることでしょう。


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