『新人生論ノート』木田元(071010)

 木田先生の本を拝読したのは『偶然性と運命』以来。何と3年ぶり。つい最近読んだような気がしていたんですけどねえ〜。何か近頃,本当にこういうことが多くなってきました。

■『新人生論ノート』(木田元/集英社新書/本体:680円)

 特に人生について深く考えたかったわけではありませんが,木田先生のご著書ということで購入。むずかしいところもなくはないですが,全体に平易で読みやすい文章になっています。故郷について,記憶について,人生行路の諸段階について,死について,性格について,戦争体験について,遊びについてなど13章。それに序章と終章,あとがきで構成されています。いろいろなことを考えさせてくれる本です。例によっていくつか抜粋。

 ひとりの人間の在り方や行動の仕方を全面的に規定するような固定した性格などというものはない(中略)たしかに「性格」といったものはあるのだろうが,それはかなり多面的で可変的なものなのである。(122ページ)

 人が押しつけてくる性格なんてものにわずらわされずに,本当に好きになれるもの,本当に夢中になれるものを探すがいい。そうすれば,人生をいまよりももっと深く豊かに生きることができるようになる。(129ページ)

 これはねえ,わが子たちにも覚えておいてほしい。「戦争体験について」という章では,先生は以下のようなことをおっしゃっています。

 当時は,どうにも逃げ道のないこの徴兵制度を考慮に入れなければ,男の子は自分の将来を思い描くことはできなかった。そんな束縛のいっさいないいまの若者は本当に幸せだと思うし,あんな制度が二度と復活しないように祈りたい。(173ページ)

 幸い日本は,第二次大戦以降これまでは戦争に巻きこまれずにすましてきた。(中略)これは,吉田茂以来の日本の政治家たちの,狡猾とさえ言えそうな賢さによるものである。だが,それも限度にきたのか,(中略)とうとう自衛隊をイラクへ派遣せざるをえなくなった。いったいこれからどうなるのか,心配にならないわけがない。(174ページ)

 本当にねえ。どうなってしまうんでしょうか。自民党と民主党の「大連立」がありうることを私たちは考慮しておかないといけないんじゃないですかねえ。現状,「大連立」がなくても,一見戦闘地帯でないようなところへの自衛隊派遣なんて要請が,国連決議を経て寄せられたら,あっと言う間に派兵が認められてしまいそうなだけでも充分コワイですけれども。事実上の「9条骨抜き」の進行には,敏感でいないとマズイと思います。そうそう,そういえば,先日実家に行ったとき,我が母は「聖戦なんてない!」と強い口調で言っておりました。

 もう1つだけ引用。

 歳をとっていちばん淋しいのは,むかしいっしょに過した楽しいころのことをともに思い出して笑って語りあえる相手がもういないということである。こんなことがこんなに淋しいものだとは,若いころは想像もしなかった。(206ページ)


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