『遠藤周作による遠藤周作』遠藤周作(070923)

 遠藤周作さんの本はかなり読んでいるハズですが,この本の存在は全然知りませんでした。1980年,27年前に発行された本。

■『遠藤周作による遠藤周作』(遠藤周作/青銅社/定価:1,250円)

 書き下ろしでなく,いろいろなところに書かれた,遠藤周作さんらしい文章が集められております。いくつか抜粋。

 中学生のある時期から私はやはり,しゃべらなくなった。(中略)この年齢からわれわれの人生には大人のすべてが持つ孤独や寂しさが始まってくる。当人がそれを意識するとしないとにかかわらず,彼は何かからもぎ離されたような気持になっていく。少なくとも親に言ってもしかたがないのだという心を抱くようになる。(34ページ)

 昭和十七年から十八年。東京の街はもうすっかり死んだようになっていた。中国での戦争はやがて日米戦争に変り,日本が泥沼のなかでもがいている感じが,我々国民にもよくわかった頃である。(47ページ)

 黄昏のマニラ湾に入ったが,(中略)マニラは徹底的に焼けただれ,夕日のさす湾の中には無数の日本輸送船が沈んでいた。戦争が終わって初めてここを訪れる日本人はわれわれだから,フィリピン人の憎悪が集中することは覚悟していた。(中略)港からはバカヤロウとかヒトゴロシという日本語の罵声を浴びせられながら,危険をさけて船荷の間に三日間かくれていたつらさはいまだに忘れることができない。(71ページ)

 遠藤周作さんの56歳までの文章が収められており,写真も結構入っています。これはいい本です。いい巡り会いでした。


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