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『21世紀を生きる君たちへ』小山内美江子(070720)
このところ,『誤訳される日本』(1986年),『ベルリンの壁 崩れる』(1991年)など,故あって古い本ばかり読んでおります(爆笑)。この本は1984年発行(私が読んだのは1987年発行の第3刷)。副題は「日本の明日を考える」です。
■『21世紀を生きる君たちへ』(小山内美江子/岩波ジュニア新書/定価:580円)
小山内美江子さんは,『3年B組金八先生』のシナリオライター。昭和5(1930)年横浜生まれ(亡父と同い歳)。ということで,終戦の頃には15歳だったんですね。
そういう方が,21世紀を担う1984年当時の中学生から高校生ぐらいを念頭に置いて書かれた本。私は岩波ジュニア新書が大変好きで,というのは,かなりレベルの高いことでもやさしくていねいに解説してくれるからだけでなく,著者の子孫への心遣いや“祈り”のようなものが感じられるからでございます。
さて,小山内さんがこの本で若い人たちにおっしゃりたかったことを私なりに思い切り要約すると,次のようになります。
「戦争は絶対にしてはいけない。そのためには,日本がしてきたことや外国のことも理解し,外国と仲良くするための努力が必要だ。武力で国際的な問題を解決しようと世界が動いたときには,平和的対応をするよう,世界に働きかけてほしい」
この本を読んで,まず思ったこと。小山内さんと同世代の父母に育てられた私は,このような考えを父母からだけでなく周囲(祖父祖母親戚知人教師など)から,かなり受け継いでいるのだということ。そんなわけで,通常の立法や法改正であろうと,解釈改憲であろうと,憲法9条を変えるだの,ともかく戦争につながるような動きをする政党(現下の自民党,公明党,民主党など)や人は,絶対に支持したくないのでした。
ついでに言ってしまえば,いつの間にか今度の参議院議員選挙も「年金選挙」などという命名が見られるごとく,「憲法改正」という大きな論点(人為的な国家的危機だと私は思っています)については,ここは正面切って国民に問わずに済まそうという雰囲気になってきたのは誠にイカンです。
衆院で7割を占める与党という現実があり,ここで参院でも(非改選議員も含め)6割以上「憲法改正に賛成する議員」が誕生してしまったら,前国会で見られたごとく強行採決を連発して(国民投票法の改正だって無理矢理できなくはないでしょう),「憲法改正の発議」が早々になされるおそれがないとはいえません。
こういうことに敏感な人には,この危険な状況がわかっており,であるので,社民党や共産党をはじめ「憲法(9条)改正反対」という今や「一見,マヌケになってしまったかのように見えるスローガン」を,下ろそうとしないグループがあるのです。こちらがなぜ多数派にならないのか,私にはよくわからない。一方,「機を見るに敏」というか「選挙戦略」に長けた自民党は,年金問題につき「官僚」に一方的に責任を押しつけて(『はめられた公務員』そのものです! 社保庁もあまりにもひどいけれど)政治的責任を問われる事態を回避しつつ,(強行採決で)大まかに対応することを決めて,迅速な対応だの政治主導だのと“ウリ”に変換,「憲法改正」については,国民に見えにくいところで進める,もしくは,最悪でも「解釈改憲」で行けるところまで行くべくトーンダウンをしました。実にしたたかでございます。6月末に心配していたことが着々と進んでいる気がします(6月終了。国会は最後まで強行採決,政府懇談会は「対米ミサイル迎撃を」ですと…)。
先日,わが社で結婚したばかりの女性が「何だかんだ言っても,よくわからないから自民党だよね」なんて言っているのを耳にしました。悲劇的というか喜劇的というか,もしこのままの流れで日本が行ってしまったとき,最もその影響を受けるのは,政治に無関心といわれる若者(まだ投票できない人も含む)や,まだ生まれていない子どもたちです。君,その母親になっちゃうかもしれないぜ…と,オジサンは思ったことでした。
すみません。「ついで」がつい長くなってしまいました。元に戻って,小山内さんの文章から。(104ページ)
いまの中高生のみなさんには,五十年前(注:この本の発行は1984年)の戦争については何の責任もないでしょう。しかし,民族の歴史として,両親や祖父母の世代が起こした過ちを正確に知り,二度と同じような体験をくりかえさないために,友好を深めてゆく責任はあると思うのです。そのためには,大人である私たちが,あの戦争の真実を若い人々に語りついでいかなければならないと思っています。
その「戦争の真実」について,もうちょっと。当時の横浜での話。
いくら神の国といわれても,連日連夜の空襲が続き,敗戦近くなってくると,(中略)ただ,みんな死ぬのだと思っていました。(107ページ)
(終戦後)救援物資の配給で,本物のアメリカ産の肉の缶詰や白いパンをくれたアメリカの占領軍は,飢えていた人々にとっては,救世主のようにさえみえたのです。(117ページ)
(終戦の)年の冬は寒く,家を焼かれ家族を失って上野の地下道に住みついた人たちのなかから,毎日のように凍死者が出ました。学童疎開中,両親を空襲で失った子ども,あるいは,働き手に死なれたお年寄りなど,ここでも弱いものから死んでいったのです。(120ページ)
(新憲法施行について)二度とあの地獄を,権力によって押しつける者がいなくなったという実感が,国民の将来に大きな希望を持たせたといえるでしょう。(ただし,沖縄だけは切りはなされて軍政下におかれてしまいました。)
まだ,何もかもないものだらけでしたが,その日から,日本ははっきりと平和国家としての道を歩み始めたのです。二度と戦争はしない,ということで世界の平和に役立っていく。これよりほかには,(中略)死んでいった(中略)人々の(中略)魂を慰める方法はないと思いました。(120〜121ページ)
引用も多くなってしまいましたが,本当はもっともっと引きたいところがあります。小山内さんはシンガポール,マレーシアなどで,“侵略の傷跡”に触れられ,まさに上に書いてあるような“死”や“飢え”などを,私たちの祖先が(特に)アジアでもたらしてしまったこと,文化や宗教の違いを知り,尊重するということなどを若い人々に訴えています。私も同感です。原爆だけがいけないわけではありません(久間防衛大臣辞任で思うこと)。
さらにちょっと補足すると,以前読んだ『本当に憲法改正まで行くつもりですか?』でも出てきましたが,日本が海外派兵をしたときには,海外で日本軍が戦っているけれど,一般国民は戦死者の周囲の人以外には実感がわかないということ。アメリカのように,国内では普通の生活が行われており,戦争(や戦死した兵士のご家族のこと)は「テレビで観るもの」という感じになる。でも,戦地ではかつてのアジアなどで私たちの祖先がしたことと同じようなことが目前で行われて,私たちへのたとえば中国や韓国の人の憎しみのようなものの芽がばらまかれることになる。それと,近代戦争では,まずは,テレビゲームのようにミサイルなどが撃ち込まれる。戦争で原爆や爆弾を落としたパイロットも「上空から地図上の決まったところでボタンを押しただけ」という感覚だったのかもしれませんが,いずれにしろ「殺人」をしているという実感が兵士にも,とりあえずは薄い。この時点で現地では大量の死傷者が出ます。こうした行為は,国際情勢によっては,日本にミサイルが飛んでくる可能性を高めることにもなります(「マムシとアオダイショウ」)。これらは私たち自身で防げることです。まずは,今度の参議院議員選挙から,です。
この本は,高校2年の娘に読ませます(ちなみに,この子に高校から与えられた夏休みの読書の宿題は夏目漱石の『こころ』です。『こころ』よりこっちだと,私は思います)。それと,この本では,『れくいえむ』(郷静子)という,戦争中の動員女子学徒の短い一生を描いた小説が紹介されています。これも,親子で読もうと思います。
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