『シングル化する日本』伊田広行(070519)

 先日,伊田さんの講演を伺う機会があり,こういう考えはアリだよな〜と思ったことでした。

 たまたま,発砲立てこもり男と頭部持参の母親殺し17歳少年の事件があり,私は,

「家族」が果たす個人の精神的安定に関する役割を再認識した上での「個人の尊重をベースとした新家族主義」(「国家がその頂点」とかいう話では断じてありません)のような考え方ですとか,その「個人の尊重をベースとした新家族主義」的習慣(「道徳教育」なんて「統制」の話でも断じてなく)が社会に自然にゆっくり浸透していく必要があるように思います。

 といったこと(「個人の尊重をベースとした新家族主義」)を考えたりしたわけですが,伊田さんは「個人」が尊重される社会的システムの枠組みについてわかりやすく提唱されています。

■『シングル化する日本』(伊田広行/洋泉社/本体:720円〉

   

「シングル化する日本」というと,そういう方向に日本全体の風潮が流れているという印象がしますが,この本に書かれていることはそうでなく,ストレートに言おうとすると,「世帯単位から個人単位に社会の制度を変えましょう」というところです。

 かなり思い切った発想で,たとえば,徴税,戸籍などを個人単位で管理しようという話などが出てきます。政府の徴税コストや戸籍の管理システム,それこそ現在ガタガタである社会保険料の管理システムなど,「個人単位でやったらどうなっちゃうんだよ?」と,まずは思います。そのためには増税も致し方ない。福祉や環境を重視した「大きな政府」でよい。スゥェーデンなどでは重い国民負担があっても国民の納得は得られているので,日本でも不可能ではないといった主張もなされています。

 政治的にこうした主張が受け入れられるには,かなりの時間がかかるものと思われますが,現在の日本の急速な「国家中心的政策」の進展を見ていると,悠長な態度でもいられないよなと思います。アメリカ型社会と北欧型社会と,どちらからより多くを学んだほうがよいかといえば,後者ですよね。そうしたことからも,伊田さんのお考えが支持されるかどうかはともかくとして,もっと知られればいいなと思ったことでした。

 ちなみに,安原和雄先生のお考え(『足を知る経済』『平和をつくる構想』)とかなり近いと感じました。伊田さんや安原先生のお考えは,非常に知的で意志的でストイック(禁欲的)で,いろいろと考えさせられ,覚悟もいるし,不安でもあるけれど,現状よりはこちらの方向のほうが望ましいのではないでしょうか。


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