『知的創造のヒント』外山滋比古(070429)

 こういう本があることは随分前から知ってはいた(1977年第1刷)のですが,積極的に買い求めるというところまでは行っておりませんでした。先日,偶然,この本を発見して購入。1997年の第32刷。すごいロングセラーなんですね。Amazonで検索したら,まだ出てくる(ユーズドばかりとはいえ)ので,現役なんですね。素晴らしい。

■『知的創造のヒント』(外山滋比古/講談社現代新書/本体:631円〉

   

 外山先生は1923年生まれの英文学者。

 忘却の効用,雑談の効用,出家的,メタ・メタノート,カクテル文化,エディターシップなど,勉強になりました。さすがに長年に渡って多くの読者の支持を得続けているだけのことはあります。読んでソンはありません。上右は章ごとの扉のうちの1つ。これがなかなか楽しい。木片の両側に穴が空いていてそこに棒を通しただけ。この構造だとハシゴは無限に続けられそう。「すんげえ,頭よくない?」(語尾上げ)と思ったことでした。

 この本が書かれた当時の状況(30年前なので,私は18歳)がよくわかりませんが,私は,暗記せよと強制される以外の「勉強法」についての授業は受けた記憶がなく,また,そうした本を読んだことも,学生時代にはありませんでした。最近でもよく聞くのは「論文の書き方」やら「考えをまとめる方法」(KJ法など)について,われわれはほとんど知識(や作法)をもっていないこと。そういうことを考えると,この本が出た当時は今よりはるかに「衝撃的」だったのかもしれません。「知的創造のヒント」という控え目なタイトルも好もしいですねえ。

 こうした考え方に影響されて(もしくは海外で同じようなことを学ばれて)偉くなった方が「超整理法」とか「時間活用術」とかを書かれているんでしょうかね。いま,私が読んで,ビジネスマンとして長年やってきたノウハウを考えると,この本に書かれてあることのほとんどは実践していたり感じていることなわけですが,それらがまとめて書かれてあることがありがたい。これも現役学生の長男行きでございます。

 例によってちょっと引用。17〜20ページ。

 記憶は完全な原形の再生ではないはずだが,一般には,そう思われている。ものを食べてしばらくすると,食べたものは胃の中で消化が始まる。それをもどして見れば,おそらくもとの形はとどめていまい。原形そっくりが出てくるようだったら,その人間の胃は消化力がゼロという証拠である。知識についても似たことがいえよう。(中略)しかるに,世の中は,そういう微弱な消化力しかもたない頭を指して,頭がいい,などともてはやす。それで,猫も杓子も,忘れるな,記憶せよ,が合言葉となる。(中略)本当に頭がいい人間とは,忘れるべきことを労せずして忘れられる人のことでなければならない。世間が糞詰まりみたいな頭を指して優秀だなどというのはとんだ誤解である。


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