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『文学の中の法 新版』長尾龍一(070417)
何かで長尾龍一先生のこの本が発行されていることを知り,『探究の生涯 長尾克子の軌跡』とともに即購入。長尾龍一先生の本を読んだのは,『日本憲法思想史』(2007.3.11)の再読以来1か月ぶり。
■『文学の中の法 新版』(長尾龍一/発行:慈学社出版/発売:大学図書/本体:2,600円)
先生には申し訳ないのですが,私は先生のご著書の中では,『法学に遊ぶ』(日本評論社),『歴史重箱隅つつき』(信山社)といった,一般の人向け書籍ほうのファンでして,この本もそういった意味で「必ず面白いはず」と確信して購入。その通りでございました。ただし,長尾先生にはイカンなことと存じますが,長尾先生の博識に追いつける読者は,世の中にそうはいないでしょう。そんな次第で,読者の皆様には,いつも宿題をもらうことなると覚悟してお読みいただきたい。
この本の帯にすごいことが書いてあります。「法学嫌い 皆無に!」。この本を編集された方の心意気が伝わってきますねえ。でも,そりゃなんでも言い過ぎだってとこが好きですねえ〜。私は。映画の広告で「映画史上の最高傑作」が連発され,でも駄作が山のようにあるのをわれわれは知っている。映画広告の大袈裟さは「市民権」を得ている感じですが,あのノリですね。「法学嫌い
皆無に!」は,映画広告に比べるとインテリっぽくて,それも微笑ましい感じでよろしいと存じます。(^_^;)
さてさて。この本では,ギリシア神話,シェークスピア,漱石,鴎外,松本清張,司馬遼太郎を題材に法や社会制度に関することが語られます。長尾先生の博学ぶりや茶目っ気,ユーモアが楽しいです。でも,文学や映画を題材にして社会学的考察をされた奥井智之先生の『おとなになるためのステップ』(弘文堂)と同様,元の,たとえばギリシア神話を読んでいないとわからないところが多数出てきます。そういう点では,日本の作家を扱った部分が,私にはわかりやすいところが多かったです。
鴎外の『かのやうに』について書かれた部分。(146ページ)
「天皇制国家」のまっただ中にいながら,維新の指導者たちが,開国を不可避と知りつつ,開国が許し難きことである「かのやうに」振舞ったこと,幼い天皇に権力を与えるつもりもない癖に,天皇がすべての権力の保持者である「かのやうに」扱う体制を創造したこと,この明治国家の発端からの「ごまかし」を,冷徹に見抜いていた鴎外の批判的知性には,敬服を禁じ得ません。
長尾先生,お元気そうで何よりです。いい読書でした。今も先生と,こうした勉強ができる日本大学の学生さんが羨ましいです。
なお,この本を読むと,長尾龍一先生からプレゼントをいただく可能性が生まれます。詳しくは本書「新版 あとがき」をご参照ください。
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