『物語のはじまり 短歌でつづる日常』松村由利子(070414)

 『薄荷色の空に』『鳥女』の松村由利子さんが,今年3月11日の日本経済新聞朝刊に出てまして,そこでこの本のことを知りました。

■『物語のはじまり 短歌でつづる日常』(松村由利子/中央公論新社/本体:1,800円)

     

 この本は,「働く」「恋する」「産む」「老いる」「病む、別れる」など10のテーマで構成されており,松村さんの歌ではなく,いろいろな方の歌とそれに関する松村さんのエッセーが載せられています。『四季のうた』のように,月や季節で歌を並べるのもいいですが,このようなテーマで並べるのも面白い。

 松村さんの地の文からご紹介。

「自分に合った仕事」というのは,たぶん一つの物語である。その物語がかなえられれば,自分の能力を百パーセント生かすことができ,つらい仕事にも耐えられる――若い人はそう思うのだろう。しかし,多くの人たちは,仕事が自分に合っているかどうかなんて考えずに日々働いている。毎日仕事をしていれば,喜びも苛立ちもあるが,それが適職かどうかとはあまり関係ない。また,年齢を重ねたところで,何が自分に合っているか分かるものでもない。(11ページ)

 黒いリクルート・スーツを着て就職活動をしている若い人をよく見かける昨今であります。昨年は我が家の長女もその一員でした。上のようなことをね,彼ら彼女らに,だれか話してやっておいてほしい,と思ったことでした。それと,何で私がの文章に引っかかったかというと,多分,今,ちょっと仕事がしっくりきていないからでしょう。ま,でも,「そんなときもあら〜ね」と,ひとまずナリユキに任せるつもりでいられるのは,四半世紀もビジネスマンをやって身につけた「太さ」なのでしょう。

 紹介されている歌も1つ。幼いお子さんを亡くされた方の歌。

  たちまちに涙あふれて夜の市の玩具売場を逃れ来にけり
  木俣修

 胸が痛くなります。が,木俣修さんがこういう歌を残してくれたおかげで,少し救われる方もあることでしょう。

「松村さんが選ぶ歌ってこういうのなんだな」ということで,もちろん,ファンは必読ですね。

 さて。この本を読んだ後,松村さんの歌にも触れたくなって,『薄荷色の空に』(上右の写真)を再読。その中の有名な歌。

  白木蓮の卵いよいよ膨らみて大地の祭り始まらんとす

 モクレン咲きましたあ〜と喜んでいたときにこの歌を思い出せなかったのが残念。でも,白木蓮…これ,モクレンと読んでいいのか,字余りでシロモクレンと読むのかわからなかったのですが,ハクレンなのだと今回の『物語のはじまり』を読んで知りました。短歌の本などを読むと,植物の名前など知らない言葉や漢字がたくさん出てきて,それも勉強になるんですよね。


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