『やさしさの精神病理』大平健(070410)

 『豊かさの精神病理』ほどのショックは受けませんでしたが,「あとがき」を読みますと,この本のほうが,大平先生としては「進歩」した知見を披露できたとお考えのようです。

■『やさしさの精神病理』(大平健/岩波新書/本体:630円)

 

 確かにねえ。「やさしさ」って,私が中学生の頃ですかね。随分強調されましたねえ。かぐや姫の『神田川』とか中村雅俊さんが出演していたテレビドラマ『俺達の〜』など思い出しますねえ。全共闘な長髪・ジーパンな人たちが生んだ文化かね,なんて思いますねえ。私も随分と長い間やさしい男を演じてきた気がします。

 この歳になると,恥ずかしげもなく「やさしさ」を前面に出すなんてのはダサくて,父やその上の世代のオジサンたちの,やさしそうには全然見えない(というより明らかに外見はコワイ)けど,実はやさしいってのが格好いいのダと心から思いますねえ。粗にして野だが卑ではないのね。

 さてさて。この本の話。やさしい人たちの精神分析。面白い。

 「奥さんの気持を……尋ねてみましたか?」
 「いいえ。だって,悲しんでいるに決まっているじゃありませんか」
 やはり。相手の気持をあたかも決めつけてしまうかのようなこういう言い方は“やさしさ”の特徴です。
(81ページ)

 “やさしい人たち”は「プライバシー」だの「プライベートなこと」だのといった言葉をよく使います。「自分の本当の気持」を人に知られるのが嫌なので,ヒントになりそうな具体的なことを隠しておきたいのです(170ページ)

 我が身を振り返りつつこういう本を読むと,私にも「やさしさの精神病理」はあるわけですのでちょっと怖くなったりもしますが,でも面白い。


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