『日本経済探偵術』赤羽隆夫(061007)

 赤羽隆夫氏は,この本が出版されたとき(1997年2月)は慶應義塾大学総合政策学部教授だったのですが,現在は,そうでない模様。元・経済企画庁事務次官。官庁エコノミストのトップまで登りつめた方。

■『日本経済探偵術』(赤羽隆夫/東洋経済新報社/本体:1,854円)

 こういう本が出ていると知ったときから読みたいと思っておりました。発行時から9年経って,BOOK-OFFで,ようやく出会えました。赤羽氏は日本シャーロック・ホームズ・クラブ会員で「景気探偵」と自称されています。「はしがき」で「経済学が解明に失敗した経済の謎は,謎解きが本職の名探偵の智恵を借り,その探偵術を応用して解けばよい」と書いておられます(iiページ)。東大経済学部を卒業し,経済白書を2回執筆された方のお言葉ですので,かなり興味をそそられました。

 「はしがき」の本文3行目にいきなり「脅迫観念」と出てきて(正しくは「強迫観念」),誤植だらけかも,と,イヤーな予感がしましたが,そんなことはありませんでした。残念なのは,私が探偵小説に詳しくないこと。ホームズは小学校の頃,子供向けの本はかなり読みましたが,それでも,まったくといっていいほど記憶にないのでした。野球ばっかりしてたからなあ〜。(^_^;)

 さてさて。この本はかなり面白いです。探偵小説,マクロ経済学,統計学,有名な小宮・赤羽論争に詳しい方なら,相当に楽しめるのではないでしょうか。ちなみに私は,マクロ経済学ごく少々,小宮・赤羽論争少々の知識でかなり楽しめました。その影響で,この本を拝読後(経済学の教科書でなく)エドガー・アラン・ポーの探偵小説を買いにBOOK-OFFに走りました。お目当ての本は発見できず,別の本を買ってくるハメになりましたが…。なお,わざとなんでしょうが(これについては後述),赤羽氏の言葉づかいで相当品性に欠けるところがあるのがちよっと残念。

 第2章の「世紀の大発見―究極の消費・貯蓄学説の出現―」は面白かった。そうなんだあ〜と納得できました。ただし,それを認めると,その後の従来の消費関数を前提とした諸々の理論はどうなってしまうのかわからず,そこまでで思考を中断。(^_^;)

 第3章の「鏡の国の国際収支理論」は,まあ,ここが特に面白いと思われる方もいらっしゃるかと存じますが,小宮・赤羽論争に関連して,かなり興奮して書かれた文章が見られます。あまりにハゲしく,故意に美しくない言葉を使っての小宮隆太郎先生への反駁・皮肉に,気の弱い私なんぞは3メートルほどは引いてしまう感じです。赤羽氏の文章を拝読する限りお怒りはごもっともだとは思われるのですが…。で,そのハゲしさのおかげで,論争のポイントが詳しく書かれており,S(貯蓄)−I(投資)>X(輸出)−M(輸入)は,「経常黒字だから貯蓄超過になる」と考えなくてはならず,「貯蓄超過だから経常黒字になる」と考えてはいけないということはわかりました。いつまで覚えていられるか自信はありませんが…。Sが国内総貯蓄でなく総貯蓄で,Iが国内総投資ってところがミソなんですね。きっと。これまた,じゃ,通常のマクロの教科書はこの辺,どう書いてあるのかな? と思いましたが,調べて頭がこんがらがるのがイヤで,これもここまでとしました。(^_^;)


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