『台湾の主張』李登輝(061001)

 この本の初版は1999年6月発行。私の手元にあるのは,同年7月発行の6刷。よく売れたんですね。この本は。その後もちょくちょく耳にし,目にする機会があったのですが,その度に「読んでないなあ〜」と気になっておりました。先週の日曜日にBOOK-OFFさんで発見。ついに読むことができました。大変勉強になりました。オススメです。

■『台湾の主張』(李登輝/PHP研究所/本体:1,524円)

 岸田秀先生の『日本がアメリカを赦す日』に引き続き,ちょっと国際関係のお勉強。

 李登輝さんは,日本も含めいろいろなところに行こうとするたびに何かと話題になり,気になっていた方(この程度のことしか言えないのは,ひとえに勉強不足のせい。お恥ずかしい次第で…)。台湾の前総統。1923年生まれ。日本の統治時代に台湾に生まれ,日本の教育を受け,京都帝国大学に進学。学徒動員で陸軍に入り,終戦のときは少尉だったそうです。その後台北大学に編入した後,アメリカに渡ってアイオワ州立大学,コーネル大学で学び,博士号も取得した,インテリ&国際人。すごい方なんですね。この本を読んで,日本が台湾を占領していた時代(1895-1945)は,そう遠くにはないのだなあと改めて思ったことでした。

 この本では,台湾が,中国大陸,アメリカ,旧統治国の日本などとの微妙な関係に配慮しつつ,蒋介石以降,国づくりを進めてきた軌跡がソフトで上品,かつ美しい口調で語られています。行政・法律・経済分野など広い分野に渡る知性も感じられます。何だか凄い文章。

 だのに,まったくヘボくて恐縮ですが,「台湾は大変なんだなあ。今でも国の土台づくりの最中なんだ」というのが,本書を読んでの私の第一の感想です。松下圭一先生の造語の「シビルミニマム」という言葉も出てきます(74ページ以降)。私たちも,戦後復興の際には,同じような希望を抱き,苦労をしてきたはずなんですよね。日本の現状を,先人達はどうご覧になっているのかを考えると,申し訳ない気分になってきます。。。

 例によって,印象的だった文章を抜粋しておきます。

 政治家はときとして「能力」と「利害」は無視できるようにならなければならない。そのためには「大きく太く」ものごとを把握しなければならない。これは,その人が身につけている実務的な「能力」や「利害」を図る力とは,まったく関係なく必要とされるものだ。(中略)政治家として必要なのは,「大きく太く」ものごとを押さえる信念に裏打ちされた力である。(161ページ。文中の「図る」は「測る」の誤植と思われます)

 国民がどのような教育を受けるのか,国民がどのような法律制度によって統治されるのか,そして国民がどのような議会制度によって自らの声を政治に反映させるのか。この三つの制度が明確にされていなければ,そしてその制度のもつ意味が国民のあいだに深く理解されていなければ,とても民主化された国家とはいえない。(214-215ページ)

 「自己を中心とする」観念を,「社会を中心とする」観念に切り替えることが必要だ(中略)自己肯定の中に社会中心の考え方を持ち込むことで,社会のために国民のために活動しようという意志と情熱が生まれるのである(227ページ)

 この3番目の文章は,松下圭一先生(2006.9.20)や安原和雄先生(2006.7.16)がおっしゃっていることと一致します。そういうことだよな〜と,ここでも(頭ではなんですが)納得いたしました。


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