『現代政治*発想と回想』松下圭一(060920)

 『転型期日本の政治と文化』(2006.2.5)を拝読してから約7か月。松下先生の本がまた発行されました。

■『現代政治*発想と回想』(松下圭一/法政大学出版局/本体:3,000円)

 この本の帯には「〈官治・集権〉の中進国構造を脱し,〈自治・分権〉の市民政治・文化へ!」と書いてあります。松下圭一先生のこれまでの仕事をざっと回想を交えて振り返りつつ,現代の課題も改めて確認するというつくりです。本体価格3,000円と,お安くはないですが,この本もオススメです。松下先生の世界観には学ぶところが多々あると思います。

 全体についてご紹介する力量はありませんので,例によっていくつか抜き書き。

 政治の現実では,理論家のいう「最適選択」も幻想にすぎませんし,「合理的選択」という発想なども図式にとどまります。実際の政治選択では《現場》の組織体質をふまえ,かつ多様な争点をくみあわせながら,(1)政策公準,(2)政策情報の二軸による事前検証の緊張のなかで,(中略)当事者は〈不完全情報〉による,暗中飛躍としての,しかも短期・長期でそれぞれ異なる評価と責任をともなう,たえざる〈決断〉をせまられます。(77ページ)

 法はもはや,天・神あるいは国家観念によって聖化される永遠の規範ではなく,都市型社会における市民の生活問題について,各政府レベル(注:自治体・国・国際機構の3つの各政府)で分担した政策・制度型解決基準の策定という,市民相互の社会工学的手法となってきました。都市型社会での国法のほとんどをしめる,いわゆる「行政法」は,(中略)「基本法」としての憲法,あるいは「市民社会法」としての民法・刑法と異なって,たえず改定される《政策法》です。変化の速い都市型社会では,変化の緩やかな農村型社会と異なって,永遠ないし「古来」の法,あるいは「絶対」の国家規範という考え方は崩壊します。(102ページ)

 会社や家庭の問題だけで汲々としていると,こんな大きなうねりが見えなくなります。「ウチら」意識で固まっている若い方々にもぜひ読んでもらいたい。いわゆる「行政法」(もちろん条例も含むと考えてよいと存じます)を「社会工学的手法」ととらえるってのは,格好いいですねえ。もうそういうことをしている学者さんもいらっしゃると思いますが,各国のある分野における行政法を社会工学的に比較した文章など,読んでみたいものです。これは法学の“永遠のフロンティアじゃ〜ん”と思ったりもしました。


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