『平和をつくる構想』安原和雄(060716)

 『足るを知る経済』(2006.1.19)安原和雄先生の最新刊。安原先生は1935年広島県福山市川辺町生まれ。毎日新聞論説委員等を経て,現在,足利工業大学名誉教授,フリージャーナリストなど肩書多数。著書多数。

■『平和をつくる構想』(安原和雄/発行:澤田出版株式会社,発売:民衆社/本体1,800円)

 この本の副題は「石橋湛山の小日本主義に学ぶ」となっています。確かに石橋湛山の話もベースにはありますが,環境問題・国際問題等,現代の情勢を踏まえて,石橋湛山の考えをさらに発展させたところでの驚くべき(驚くこと自体がおかしいと先生にはお叱りを受けそうですが)提案が多数なされています。皆様もぜひご一読くださいませ。

 ざっと引用(青字98ページ)させていただくと,安原先生は,石橋湛山の小日本主義論の特色を次の5つにまとめられ,

 一 領土拡大をめざす大日本主義のアンチ・テーゼであること
 二 軍備拡張は亡国への道であると認識していること
 三 平和憲法第九条の規定の「戦争放棄と戦力不保持」を世界に
  先駆けた理念としてきわめて高く評価していること
 四 平和憲法と日米安全保障条約とは矛盾しており,平和憲法の
  理念を優先させ,それに立脚すべきであること
 五 世界とアジアの平和のために「日中米ソ平和同盟」締結を提
  唱したこと

 これらを踏まえて,21世紀版小日本主義の特色として次の5つを挙げられています。

 一 反大国主義路線のすすめ
 二 「持続的発展」のすすめ
(安原先生は別のところで「成長」で
  なく「発展」であることが肝要とおっしゃっています)
 三 「簡素な経済」のすすめ
 四 安保解体と「東アジア平和同盟」のすすめ
 五 平和貢献と仏教のすすめ

 この本の書名を改めて見てみれば,『平和をつくる構想』です。この「つくる」という積極的な姿勢が大切で「守る,護る」ではないと,本書でも強調されています。憲法12条にある「不断の努力」という文言が思い起こされます。

 いちおうわれわれは平和に暮らしているような気がしていますが,近海にテポドンを発射されたり,国連決議でもめたり,サミットで協議されていること,レバノンとイスラエルの間ではミサイルが飛び交って死者も大勢出ていることなどを見ると,ただ鈍感だから平和な気分でいられるのかな,とも思います。もうちょっと正直に言うと,国際関係を含む現実や将来に対する漠然とした不安はあるものの,それらについて深く考えないようにして日々をやりすごしているということではないでしょうか。われわれが本当に安心して心豊かに暮らすには,世界がどうなればよいのか,そのためにどうすればよいのかと安原先生は真剣にお考えになっていらっしゃいます。われわれ自身がもっと平和について勉強し「意志的」に行動しなくてはならないという,キビシイご提言。

 目次から章・節などの大小の区別なく,さらにいくつか気になる言葉を引いておきます。

 ・アメリカ「帝国」に未来はない
 ・「日中米ソ平和同盟」の提唱
 ・脱「石油浪費経済」
 ・脱「成長主義経済」
 ・知足,共生,中道と平和路線
 ・「いのち尊重」の仏教経済学のすすめ
 ・自衛隊を改組し,非武装「地球救援隊」をつくろう

 アメリカに未来はないというのは同感です。軍事同盟でなく平和同盟というのも納得できます(歴史上,「不可侵条約」など国同士の約束がホゴにされることはよく見られますが,それを言うのであれば,軍事同盟だって同様です)。さらに,量的拡大を志向する「成長主義」でなく質的充足をめざすこと(その重要な要素として,足るを知ること),共生など,われわれの精神に仏教的なものがあるせいなのか,自然とその理念が理解できます。“本当にそうなるといいなあ〜”と素直に思えるところに,この構想が「リアル」なものになる可能性を感じます。また,非武装「地球救援隊」が創設されたら,(足るを知りつつ,収入等もろもろの折合いがつけば(^_^;))志願したいとも思ったことでした。世界に誇るべき日本国憲法9条(と前文…は長いか)を背負って,私もサムライ・ジャパンの一員として,プライドを持って働きたい。歳だし,あんまり役に立たないであろうと簡単に予想できちゃうところが,チト淋しいけれど…。


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