『官僚技官』西川伸一(050608)
 『異色官僚』(●近頃の読書(2005.5.14)),『官僚の風貌』(●近頃の読書(2005.6.5)),『技術官僚』(●近頃の読書(2005.6.7))に次ぐ官僚モノ第4弾。

■『官僚技官』(西川伸一/五月書房/本体1,600円)

 著者の西川伸一先生は1961年生まれ。今インターネットで見たら明治大学教授。所属学会は日本政治学会,日本行政学会,政治思想学会。
 この本は2002年2月刊行。奥付を見ると新藤宗幸先生の『技術官僚』(●近頃の読書(2005.6.7))より1か月前に出た本。若手の研究者としては同時期に同じ専攻の“御大”から同じようなテーマで本を出されたのは,ちょっと辛かったかもしれませんね。新藤先生にしても,「ちょっと,どうもな…」と,この本が出たことを知ったときには思われたことでしょう。
 これまでの学習で,だいぶ技官について現状がわかってきた気がしておりましたが,この本も読んでよかったです。冒頭第1章「公共事業はだれのためのものか」では,公共事業の景気刺激効果の比較がされています。経済学でいう“乗数効果”の比較なのですが,産業構造の変化により,建設投資よりIT投資,建設投資より福祉・教育分野への投資のほうが有効といったことが語られます。“おお〜。いま流行の公共政策? 公共経済ってこういう学問?”というところです。
 ふと,第一次産業に従事する人が減っているのは“常識”として,じゃあ,農林水産省ってだれのためにあるんだ? なんて思ったりして…。就業人口・農林水産省の職員数・予算などを他の省庁(例えば文部科学省とか経済産業省)と比較したらどうなるんでしょうね。怖いことになりそうなのでやりませんけど,直観的には,その役割は,食物の安全性,森林保全といった重要分野はあるものの,農道整備とか農業用水関連の需要は縮小しているはずなので,内部でうまく予算や人の配分が移動していないと“非効率”なことになっていそうな気がします。
 第7章でも「公共選択論」が扱われ,ニスカネン・モデルなどが紹介されています。この辺に「従来の行政学者とは違うゼ」という,西川先生の矜持が感じられてよろしゅうございます。
 それにつけても,この本でもキャリア技官の人事や「技官王国」について語られ,政官財の“鉄の関係”に絶望的な気分になってきます。西川先生は,「こんな名簿どこから入手されたのですか?」というような,ジャーナリストばりの資料を収集され,また官僚の退職後の経歴など独自調査もされています。「すごい調査だなあ」(いかにも足を使った地味な資料が多いです)と感心いたしました。お疲れさまでした。大変勉強になりました。ありがとうございました。


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