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『技術官僚』新藤宗幸(050607)
『異色官僚』(●近頃の読書(2005.5.14)),『官僚の風貌』(●近頃の読書(2005.6.5))と読んできて,俄然,官僚への関心が高まってしまいました。東大法学部を卒業した人が多く採用される「事務官」については,ツラツラ目にしたり耳にしたりするわけですが,「技官」については,そういえば,まったくと言っていいほど知識がないのでした。
■『技術官僚』(新藤宗幸/岩波新書/本体700円)
この本は2002年3月刊の比較的新しい本。新藤宗幸先生は1946年生まれ。昔っから有名な行政学者で,新聞・雑誌等にもよく書かれています。立教大学教授を経て現在は千葉大学教授。千葉大には行政学専攻で元東京大学教授の大森彌(わたる)先生がいらっしゃるのですが,この先生に引っ張られたんですね。きっと。んなことはともかく。今回得た知識の一部を覚え書き。
〔1〕府省庁の事務系・技術系職員の採用試験は,大卒程度の国家I種,同じく大卒程度の大卒程度の国家II種,高卒程度の国家III種の3本(ただし,国税専門官,労働基準監督官などの専門職員の採用試験もある)。このうち国家I種試験に合格・採用された人が幹部候補生(いわゆる「キャリア組」)。
〔2〕国家I種の試験区分には,行政,法律,経済(この3区分が法文系といわれる事務官の試験区分)のほか人間科学I(心理系),理工I(一般工学系),農学I(農業科学系)など技術系10区分があり,計13区分。
〔3〕国家II種の試験区分には,行政(北海道・東北など地域別に分かれる)のほか,技術系で物理・土木など10区分があり,計11区分(行政の地域別を独立した区分とみなすと18区分)。
〔4〕国家I種試験からの採用数(2000年)は事務官が169人,技官が417人と技官が圧倒的多数。うち建設省では事務官が33人,技官が74人。農水省では事務官が11人,技官が114人。(23ページ)
〔5〕国家II種試験からの採用数(2000年)は事務官が2,594人,技官が875人と事務官が圧倒的多数。
■以上が基礎知識。公務員の世界には,〔1〕で挙げた試験のうち,国家I種から採用された「キャリア組」とそれ以外の試験から採用された「ノンキャリア組」の間に昇進面などで大きな差があるのは有名な話。さて,「キャリア組」の中でもいくつか特記事項があり,官僚の最高峰の「事務次官」(大臣・副大臣・大臣政務官に次ぐポスト)になるのは,「キャリア組」のほぼ事務官(技官の最高峰は「技監」)。局長・部長といった幹部ポストも事務官が圧倒的,なかでも東大法学部卒で国家I種法律から採用された人がグイグイ昇進していく。
■おなじ「キャリア組」なのに,事務官と技官で「この差は何?」ということなのですが,これが現状。この本はその辺りを核として,“これはマズイぞ”という問題意識で書かれた本。“これじゃあ,技官はやる気なくなるでしょう〜”とだれもが思うことでしょう。さて,とはいえ,では何故その怒りが大爆発することもなく(「技官の反乱」的なことは散発的には起きていますが),ここまで来たのか。大きく言って,専門家としての「技官」は「技官の王国」を作って独特のファミリーを形成して「美味しい思い」をしてきた…ということです。技官同士の中でも差別があり,たとえば,土木ファミリーや電気ファミリーなんてのがあるそうです。外務省の「ロシアン・スクール」とかもありましたね。
■第3章「なぜ公共事業は止まらないのか」,第4章「なぜHIV薬害事件はおきたのか」は読んでいて怒りで手が震えるほど。特に第4章。事務官である局長は,医師で専門家(と局長は思っていたが,実は医師の資格があるというだけで感染症の専門家ではない)の課長(旧厚生省の医師・薬剤師の採用は先の国家I種,II種,III種 とは別の選考採用)と亡くなった例の帝京大学の「権威」(血友病治療の「権威」であって,感染症一般の「権威」ではない)の暴走を止められない。
この本はさまざまな数値や事例で,いろいろなことを考えさせてくれます。文章も読みやすいです。新藤先生は賢い方なんだな〜と随所で感心させてくれます。“鋭い!”って感じです。さて。今回勉強になったのは上のようなことだけではありませんが,読んでいて強く感じたのは,制度もさることながら,この傾向は,わが国のどこの組織にもあるぞ,ということです。ファミリーやセクショナリズム(わが社もすごい。ちょっとでも業務が抵触すると「一言の相談もない」とかすぐ切れる人多数。重役に妙なネジコミをする寝業師多数),「専門家に任せる」と「理解ある上司のフリ」をして実は「ただ無責任なだけの管理職」多数…。
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