|
『宇宙をうたう』海部宣男(050507)
長いこと本棚にささっていた本。サブタイトルは「天文学者が訪ねる歌びとの世界」。
■『宇宙をうたう』(海部宣男/中公新書/本体700円)
2004年3月に『光速より速い光』(ジョアオ・マゲイジョ/青木薫・訳/NHK出版)という本を読んで以来の宇宙モノ。はは。宇宙の人が文学的な方面に近づいてきてくれて,私なんぞにも読みやすい本をまとめてくださいました。「私が試みたかったのは,それぞれの時代のうたの詠み手がこころに抱いていた宇宙のイメージと,その変遷に迫ることだった」(「はじめに」より)という本。
著者の海部宣男先生は1943年生まれ。国立天文台教授(いま,ネットで検索したら国立天文台長とのことです)で,長野県野辺山の電波望遠鏡の建設をし,ハワイにある光学赤外線望遠鏡「すばる」の建設責任者だった方。めっちゃエライ科学者(多分「日本が世界に誇る」なんて紹介されるような方)なんですね。すみません。不勉強で…。それにしても,ご専門以外に(ご専門の「周辺」ではありますが),こういう勉強をされているのは素晴らしい。
建礼門院右京大夫が亡くなった恋人(=平資盛)を想う嘆きを詠った歌として,以下が紹介されています(34ページ)。
眺むれば心も尽きて星合の空に満ちぬるわが思ひかな
(建礼門院右京大夫集)
平資盛(たいらのすけもり)は清盛の孫で壇ノ浦の戦い(1185年)で亡くなったとのこと(やっぱ,ネットは便利ですね〜/ついでに「建礼門院右京大夫との恋物語は有名」なんてコメントを見て,「私には有名じゃなかった」と,ちょっと悲しかった)。
この本は3章構成。第2章の以下の文章は印象的。
22 心平さんの宇宙(もちろん,この心平さんは草野心平さんのこと)
24 宮澤賢治の宇宙観
|
第3章「宇宙への祈り」に収められた文章はどれも素晴らしかった。
25 祈りの線―ナスカ
26 巨石文化と宇宙
27 縄文人の宇宙(一)
28 縄文人の宇宙(二)
29 「星」の源流
30 宇宙開闢のうた
ここでは「往古来今これを宙といい,
四方上下これを宇という」(『淮南
子』斉俗訓)という中国の定義が紹介
されています。過去から未来,四方上
下の空間すべて,これを「宇宙」とい
うのだと。なるほど。
31 曼陀羅の宇宙を見る
右は曼陀羅に描かれた「土星」(183
ページ)。
32 太陽神スーリヤを訪ねて
33 日食―まことなるもの?
34 観測者の魂
35 ハワイの宇宙
|

|
第3章は「うた」でないところで宇宙と私たちの関わりを探求された内容。文化人類学との接点も多く,興味深く拝読。海部先生の優しい真面目なお人柄が感じられる文章も多数あり,非常によい読後感でした。おススメです。新書は軽いし,それぞれの文章が長くないので細切れの時間でも読めます。
|