『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り』坪内祐三(041127)
 またまたヤフー・オークションで購入した本。酒を飲んで2,900円払うのは平気なのに,何で本には払えないかな〜? 送料込みで,1,000円ぐらいで落札。初版一刷。これはまあ,名著と言っていいでしょう。お疲れさまでした。ありがとうございました。坪内祐三様。

■『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り』(坪内祐三/マガジンハウス/本体2,900円)

 『一九七二』(文藝春秋)を7月に読んで以来の坪内さんモノ。これは本当に面白かった。550ページ,厚さにして4センチはあろうかという大著ですが,まさに寝食を忘れて(トイレが我慢できないのが腹立たしいほど)読み耽ってしまいました。漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨は,慶応三年生まれで同い歳なんだそうです(なんて言いつつ,私は漱石は4冊読んだだけ,外骨は人が外骨について書いたモノをいくつか読んだだけ,子規は国語の教科書でお目にかかっただけ,その他4人については名前を知っている程度でございます)。で,それぞれの生い立ちや青春を丁寧に調べて,オムニバス映画のように坪内さんが語ってくれます。ちょっと引用。幸田露伴の号の由来。北海道から東京に逃げ帰る(東京生まれの露伴が何故北海道におり,また何故逃げるのかという話も面白い)際に詠んだ句「里通しいざ露と寝ん草まくら」からとのこと。

 そこら中にうんちく・余談がちりばめられ,飽きません。元は雑誌に連載された文章で,テンポもいい感じ。漱石が病気の親友・正岡子規に送った手紙なども紹介されており,その友情に思わず泣きそうになったりもして…。坪内さんの語り口は下のよう。

「さて,そうこうしている内に,大事な人物について語るのを,しばらく忘れていた。
 海外にいるアイツだ。アイツ。
 南方熊楠の…(略)」(486ページ)

 相当に面白い読み物に仕上がっていると思いますが,残念なのは,この話が日清戦争(明治27年)までで終わってしまったこと。未完というか頓挫というか…。「名著と言っていい」と,「名著」と言い切れないのはこのためです。着地がビシっと決まってない。ま,これも宮武外骨が“好きだ”とおっしゃる,坪内さんなりのお洒落な終わり方〈外骨への敬意の表明〉なのかもしれませんが…。そうねえ。“名著だぞ〜,労作だぞ〜”なんて収め方は,江戸っ子の坪内さんの趣味からすれば“ダサイ”っちゃあそうなんでしょうけど…。また,この本は,内容とは関係ないのですが,本文の組み方が超イカンです。具体的に言うと,本の内側(ノドなんて言います)が1行多い。右側のページの最終行がやったら読みづらい。私の大嫌いな公園の柵と同様(人は誰もただ一人),そこに至るたびに,「ほんっっとに,ウゼーぞ,コイツ(--#)」という思いを禁じ得ませんでございました。

 とはいえ,しかしながら,しつこくて恐縮ですが内容は面白いです。ご一読をオススメします。


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