『天皇制の文化人類学』山口昌男(041120)
 ヤフー・オークションで購入した本。オークションでは,当初予想の通り,近頃はすっかり“買い手”になっております。真面目に「お取引き」しているので,評価も「非常によい」がコツコツ積み重なっております。何たって落札を確認したら,オンラインでジャパンネット銀行から「24時間振込み体制」ですので,売り手から見れば,私は「金払いのよいお客さん」なんですね。お金を振り込んで3日もすれば本が届きます。ヤフー・オークションでは,キーワードを登録する(「山口昌男」「南伸坊」などと入れておく)と,それに引っかかる出品があったときに,メールが来るというシステムがあって便利。仮にオークションでトラブルがあったとしても,ヤフーや楽天なら相手方の特定もできそうだとも思っております。山口先生のご著書は,お高い本が多い(ページ数も多い/この本も370ページあります)ので,ヤフオクとBOOK-OFFさんにはすっかりお世話になっております。出版社や先生には申し訳ありませんが…。

■『天皇制の文化人類学』(山口昌男/立風書房/定価2,700円)

    

 「もう,この話は終わったんだな」という感じですが,例の皇太子発言があった頃,購入。今は紀宮さん婚約というのが皇室関連ニュースとして話題になっております。子供の頃から「天皇さんちって不思議」と思いつつ,「まあ,“象徴”ってことで皆さんよしとされてるんでそれでいいんだろうな」と,これからもそうでしょうが,あまり考えずにおります。とはいえ興味はあるわけで,『埋もれた巨像』(上山春平)の読後でもあり,いいタイミングで読めたかな…というところです。

 この本は,山口先生の論文をいくつかまとめたもの。サイン入り。サインの横には先生直筆のイラストが…(上右)。宛名(!)と先生のサインは載せないでおきます。この本には,天皇制に関する論文も収録されていますが,帯にもあるとおり,「王権の深層構造を解読する」論文を集めた本。内容をストレートに書名にするなら「王権の深層構造」とか「王制の文化人類学」でありましょう。例によって,“売る”場合に,“天皇制”のほうがいいだろうという判断があったように推察します。

 さて,で,やっぱり「王様」の話は面白い。ネタが面白いところで,山口先生はいつもの調理法である「中心-周縁」理論をベースとして,トリックスター,スケープゴートなんて用語を駆使して,王権の性格をあぶり出していきます。蝉丸と逆髪の話なんかは本当に面白かった。私なりに理解したと思うところでは,超越であれ,逸脱であれ,中心部の安定のためには,「他方」が必要であり,「他方」との違いを強調することによって「中心」は「中心」として際立つ。人間集団は,いわゆる未開の村落にせよ近代国家にせよ,トリックスター,スケープゴートが埋め込まれた「構造」になっているということであります。「王権」と「差別・迫害される者」(河原乞食含む)に「親和性」がある,というところが,山口先生のご指摘の鋭くかつ怖いところであると私は思います。

 何度も“山口節”につまづいてきましたが,このところ,ようやくその調理法にも慣れて,まるで「○○料理を食べよう」というのと同じような気分で山口先生の本を読もうと思えるようになってきました。ちょっと引用。

社会の基準に容易に妥協することができない者は,ウイッチ(魔女)がそうであったように,不吉な攪乱者であると考えられた。社会が危機に見舞われると,こうした印象を与える人々は告発され,犠牲に供されるが,こうすることによって権力は自らの責任を転嫁し,集団もその安定を保証される。(297頁)

 この本の本筋からはちょっとはずれますが,K・バークが挙げた「政府の7つの機能」という話が出ている(302頁)ので覚書。その7つの機能というのは,
 (1)支配
 (2)サーヴィス
 (3)防禦
 (4)知識の伝達
 (5)見世物の提供
 (6)(精神的)治療
 (7)至上のものとこの世の橋渡し
 だそうで,普通の政治学の教科書では「(5)見世物の提供」が扱われていないとのこと(303頁)。この見世物の中には,公的式典(北朝鮮軍の見事な行進なんてのが頭に浮かびます)と裁判・処刑(チャウシェスクとかムネオさんのコトを思ってしまいます。ついでにこのテレビの時代,国税庁の職員が段ボール箱をボコボコ運び出す様子とか,犯人逮捕の映像とかも,政府が直接企画しているわけではないですが“見世物”ですよねえ)が含まれる,と。うーん。公的式典は「支配の正統性」(即位の儀とか),「政治的シンボル」なんて辺りでやりそうな気もしますが,そういえば裁判・処刑なんてことは法学の領域ってことで外してる気もしますね。どうなんでしょうか。ま,もし政治学の教科書でここらが落ちているとすると,そら,よくないんじゃないか〜…という気がします。直観的には,政治体制が根本から変われば,裁判所も新政権寄りの“新規”になると思いますしねえ…。政治学のテーマにならないってのは,何か妙ですよね〜。


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