『埋もれた巨像』上山春平(041103)
 薦めてくれる人があって(ありがとうございます。R・N先生),2年ぐらい前から知ってはいたのですが,ようやく「その気」になって読んだ本。

■『埋もれた巨像』(上山春平/岩波書店/本体1,200円)

 この本のサブタイトルは「国家論の試み」。帯には「日本国家誕生の謎… 藤原不比等(国家デザインの制作主体)の側から捉え直す」なんて書いてあります。文庫なのにこの価格でもあり,ちょっと怖じ気づいてなかなか手が出せませんでしたが,日常生活に疲れ,逃避行動の飲酒にも疲れて,最後の逃げ場は,私の場合は読書やビデオ鑑賞なのでしょう。そんなことはともかく…。

 いやあ〜,これは労作・名著でございます。参るな〜。世の中にはまだまだこんな本がたくさんあるんでしょうねえ。古代史にハマる人が多いのも納得がいきます。一方で,例によって,自分の知識不足からこの本が持っている魅力を充分味わえなかったのが残念です。特に神話の話のところは辛かった。イザナギ・イザナミ,アマテラス,スサノヲぐらいは名前は知っているわけですが,アメノホシホミミ,ニニギ,ヒコホホデミ,ウガヤフキアヘズ,イハレヒコなんて出てくると,もう誰が誰だかわからなくなります。「どこの国の話?」なんてね。

 これは日本の国の話。8世紀初頭に出現した国家的モニュメント群―大宝律令・平城京・日本書紀に関与した人物として,藤原不比等(=埋もれた巨像/鎌足の息子)に焦点を当て,「天皇」を君主とする国家誕生の背景が解き明かされていきます。

 私なりに思い切りこの本に書かれていることを要約すると,藤原不比等は,法(大宝律令)と歴史(日本書紀)を作って「天皇」を祭り上げ,その裏で藤原家が繁栄するようなシステムを構築した――ということです。ちっとも美しくない話であるところにリアリティがあります(もっとも私自身の日常では,世の中に「善意」というものがあることを全く信じていない人と会うと,もの凄くがっかりするし「お友だちリスト」には絶対入れないのですが)。さらに私なりの論(というほどのものではありませんが)を進めると,その後,天皇は基本的にそのままの地位に止まって(南北朝時代があったにせよ),天皇を隠れ蓑あるいはバックボーンとして,政治権力の「実権」を貴族なり武士なり人民が奪い合うという歴史が繰り返されてきたのか…なんて単純化していいようにも思います。日々のニュースを「消化」しているだけだと,根っこの大事な部分に目が行かなくなっちゃうんだよな〜と改めて思ったことでした。今回は私にとっては,日本の歴史の随分深いところの話に触れただけでも大収穫でございました。

 著者の上山春平先生は1921年生まれ。元京都大学教授で京都国立博物館館長,京都市立芸術文化大学の学長も歴任された文化功労者。インターネットで検索するとドカドカとヒットします。お元気そうで何よりでございます。


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