『地方は変われるか』佐々木信夫(040912)
 この本のサブタイトルは,「ポスト市町村合併」。「平成の大合併」で市町村・都道府県・国を挙げてガタガタしているときに,もう「ポスト市町村合併」の話なんですかあ〜? と思って,興味本位で手にしました。

■『地方は変われるか』(佐々木信夫/ちくま新書/本体740円)

 そうなんですねえ。“ガタガタしているときに先の話をされても…”と思うこと自体が,おかしいといえば,おかしいのですね。先を見越してこその今の改革なわけなので,当然,先の話を頭に入れておいて,今,動かないとね。なるほどね…と,思った次第です。これが本書を読んだ後の第一の感想。佐々木先生は何と連邦制まで視野に入れて(現実的ではないとおっしゃりながらも),これからの国・自治体・住民について語られ,さまざまな提言もされています。興奮したあ〜。久しぶりに。。。

 佐々木信夫先生は中央大学・大学院教授。元都庁マン,もとい元都庁パーソンで,早くから「自治体職員は政策のプロでなくてはならない」とおっしゃっていた方。本書にあるさまざまな提言を拝見すると,実務家はこのように知事や首長に選択肢を示すものなのかな? とも思いました。通常の学者さんの書かれた教科書(行政学なり地方自治の,歴史や学説の紹介,近年の理論を概観するようなもの)とは違った生々しさ,新鮮さを感じました。ライブ行政学ですね。この本は。うーん。法科大学院に実務家の教授を加えねばならないということも,こうした優秀な先生のご著書を拝見すると,的はずれではないと思います。もちろん,実務家であるがゆえに,あまりに「現状肯定的・是認的」といった弱点を持ってしまう方も少なくないのではと思いますが,佐々木先生のご著書を拝読した限り(都庁を離れて随分時間が経っていることもあるでしょうが),そうしたことは感じられませんでした。

 私の所属する小さな会社では,マクロ政策とミクロ政策がうまく行かない。ミクロのレベルで超モラールダウンしており思ったような収益が上がってこない。そこで経営陣から中央主権的マクロ政策として費用節減的な指示・枠組みが降りてきたり組織改変や人事異動が行われたりする。経営陣は現場からの声を聞き入れる余裕もない風で,現場はさらに腐る…と,このような悪循環に陥っております。日本経済も同様で,マクロ政策でいろいろやろうとしているのだけれども,結局は民間レベル,それぞれのミクロレベルで立ち直るパワーがなければ,いくら規制緩和をして環境を整えても経済は回復してこないのでした。市町村合併もこれと同じようなもので,佐々木先生のおっしゃる「『広域化』と『狭域化』をいかに両立させるか」(市町村合併によって財政基盤はある程度安定し,広域的な整備や施策が可能になる一方で,地元に密着した住民自治をいかに強化していくか)が課題。その先には道州制。しかし,肝心のミクロレベルの住民の意識が相当高まってこないと,結局は市町村も都道府県も国も,ただ朽ち果てて行くだけということになりかねない。

 『お上頼み』の風土が大勢を占めている限り,この国に地方自治なんて根づかないと私は思います。我々がお上頼みでいる間は,「住民に身近な行政」なんて実現しないし,いわゆる「お役所仕事」もなくならない(お役所仕事とつるんで莫大な利益を上げている企業もなくならない)。本書の書名,『地方は変われるか』は,本当は『我々は自立した市民になれるのか』という問いであろうと理解しました(ついでに同様の構造で我が社の将来も…と思ったことでした)。ちょっと引用。本書250頁より。

 英国のスコットランドは,ブレア政権下で国会に準ずる議会の創設など広範な自治権を獲得したが,これには長年にわたる運動の下地があった。日本の道州制移行の場合も,地方からの盛り上がりなしでは議論倒れに終わる。市町村合併も府県再編も,新たな公共部門の再構築の機会である。それには国家ビジョンを掲げ,絶対反対とか,絶対賛成といった硬直した発想に囚われない,柔軟な議論が必要である。

 そうですねえ。硬直した発想というのも我々の特徴でしょうね。1つ気に入らないことがあると全部を否定してしまうような…ね。ヒステリックな反応って,多いですよねえ。地方自治に関する本なのですが,組織論としてもこの本は参考になります(コトは「この国の形」に関することなのでそこばかりに注目してはいけないのですけれど)。

 最後に。付け足しみたいでナンですが,この本を読むと,いわゆる「三位一体改革」の重要性もよくわかります。佐々木先生,大変勉強になりました。ありがとうございました。オススメです。


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