『ケアとしての死化粧』小林光恵・編著(040723)
 小林光恵さんの最新刊。小林光恵さんの別のご著書に,小林さんが現役の看護師だったときに,亡くなられた患者さんの処置をしたことが書かれており,そのとき患者さんの最後のお化粧は看護師が持ち寄った化粧品などを使ってするのだけれど,患者さんに明らかに合わないような口紅などしかなく,残念なこともあったと記されていたように思います。小林光恵さんは,その“こだわり”を,看護師さんへのアンケートをしたことをとっかかりとして,「エンゼルメイク研究会」といった会を立ち上げ,その研究会のメンバーや静岡の榛原総合病院の協力を得て,研修会を開いたり1冊の書籍にまとめるところまで育てられたのでした。実にご立派なことでございます。お疲れさまです。

■『ケアとしての死化粧』(小林光恵・編著/日本看護協会出版会/本体2,000円)

 

 この本の副題は「エンゼルメイク研究会からの提案」です。本文冒頭に「死後ケア(エンゼルケア)の概念」というベン図が示され,死後ケアの中には,A:エンゼルメイク,B:死後の身体部分の整え,C:A,B以外の死亡確認後の一切のケアがあり,このA〜Cが重なりあった部分にはグリーフケアがあるとされています。〔グリーフケア=grief〈死別・後悔・絶望などによる深い悲しみ, 悲痛〉care〕

 この本は,本来,こうした仕事に携わっておられる医療関係者や葬儀社さん,学者さんなどに向けてまとめられた本ですので,こうした仕事に関わっていない人には,とっつきにくいのは否めません。しかし,周囲に亡くなる方が多くなってくる年齢の方や,ご家族を亡くされた方であればそのときの様子を思い出したり,あれこれと(今後のことも含めて)考えさせられます(もちろん涙が出てくることも多いです)。私は父を亡くしており,また最近,小松美彦先生の『脳死・臓器移植の本当の話』を拝読したことや自分自身も特に闘病以後は死について考えることも多くなってきたこともあって,興味深く拝読いたしました。上の写真のように,なかなかおシャレな作りの本です。書かれていることは技術的専門的な事柄が多いですし,その他の部分の内容も,重かったり難しい部分もありますが,読者が極力リラックスして読めるようなツクリにしようという配慮が感じられます。

 この本の内容は,もちろん書名のとおりエンゼルメイク=死化粧に関することが中心なわけですが,エンゼルメイクの実践についてだけでなく,当然,文中のそこここに出てくる,先の「死後ケア(エンゼルケア)の概念」,またその核心である「グリーフケア」のあり方についても大きな波紋が広がることが予想されます。平たく言うと,医療関係の方々からは「ただでさえ忙しいのに,さらに守備範囲を広げるのは無理」といった反発もありそうですし,既存の葬儀社さんやお寺さんなどと医療機関の棲み分け,我々の死生観といったことについて,また,「エンゼル〜」という言い方はいかがなものか(この本でも川島みどり・日本赤十字看護大学教授からの問題提起が掲載されています),費用の算出法,法整備の問題,看護教育への影響など,まだまだこの運動は始まったばかりで課題が文字通り山積しております。それだけにこれらをある程度クリアし,というか問題点を整理して,「提案」という形にまで持ってきて,まず1冊の本にまとめられたことは大きな意義があります。できあがった本のおシャレな見た目とは逆に,この本の制作にあたっては,関係者の皆さんのオシャレじゃない大変な努力の積重ねがあったことと拝察いたします(一方で,私もこの歳になって,“こういう見た目はちっとも格好良くない地道なことをキチンとできる人こそ,本当に〈自分に対して〉おシャレなんだよなあ”なんてことも思うわけですが…)。皆様お疲れさまです。どうもありがとうございます。医療関係者はじめその予備軍の方々はもちろんとして,一般の方々にもおススメです。

 また,今後もこの運動に関して,小林さんはじめ関係者の皆さんは大変なご苦労をされるであろうと存じます。どうぞお身体には(ハートにも)気をつけて(看護医療の世界の方が多いので,これは釈迦に○○っってヤツでしょうが)頑張っていただきたいと存じます。運動が広がれば広がるほど,政治的な場面が多くなってきますので,もう1つ釈迦に○○。「困ったな」と思ったら,お天道様に恥ずかしくないかどうかを方針決定の基準にしていただければとも思います。そこさえ間違えなければ,細かな政治的妥協も,目標への1ステップとしてしなくてはならない場合は受け入れられると考えます。


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