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『経営者の精神史』山口昌男(040615)
この本をいつ,どこで買ったのか不明。でもまあ,この新刊は目にしたら必ずその場で買ったことでしょう。
■『経営者の精神史』(山口昌男/ダイヤモンド社/定価1,890円)
この本の副題は「近代日本を築いた破天荒な実業家たち」。2004年3月発行。2001年11月に『内田魯庵山脈』(2001.11.18)を読み終えて以来,山口昌男先生のご著書をだいぶ読みました(もちろん,まだまだ多数の未読はあります)が,だいぶ慣れてきた感じ。特にこのところの,『内田魯庵山脈』,『「敗者」の精神史』(2004.1.24),『「挫折」の昭和史』(2002.8.10)の3部作で,膨大な人名の出てくる人脈史的記述には慣れました(全然頭に入らないところが情けないですが…)。この本は,それらの本を補う「追補」のようなものと言ったら失礼ですかね? 明治維新後の混乱の時代,日本が近代国家たらんとしたときに,民間・公的セクター(主として国)で縦横に活躍した方の話が載っています。
私は次のようなことを考えながら読みました。明治の西洋の情報・技術を貪欲に見境なく吸収した近代化,廃仏希釈,その行き過ぎを忌避する集古会(それと,品がない気がするものの,緊急性を深く認識していたがゆえとも思われる岡倉天心の振舞い)。明治以降,近代国家として軍国化。日露戦争に勝利し,列強の“はしくれ”となるものの「大東亜共栄圏」の理想(建前)の下での第2次大戦での敗北。おそらく明治維新時にはなかったであろう,国民にほぼ共有された挫折感を胸に秘め,焦土から米軍の庇護を受けつつ(ここでしたたかにアメリカを利用したなんて評価ができると,いまの「国益」好きの人たちにはうれしいのでしょうけれど,そんな戦略的思考はなかったのではないか,と私は思います),再び混乱の中から立ち上がっていく過程で,本当に,いろんな優秀な人がいらしたんだなあ〜,と,まったく,小学生のような読者で恥ずかしいですが,そんなことを確認しつつ読んでいきました。
で,驚くのは,その人たちが,たとえば,鉄道一筋の仕事人だったかというとそうではなく,一筋でないがゆえの視野の広さを持ち,それこそ幅広い人脈でつながっていたし,公務員だったり民間人になったり,また公務員になったりと,さらに1つの省庁だけでなく省庁をまたがって行き来しています。こうした労働市場の流動性(参入・退出の自由さ),個人の能力等の多様な発露を見ると,経済社会システムが不安定であったからこそ,その当時の日本には,近代経済学でいうところの「自由市場」的状況があって,それゆえ,全体で見れば短期に効率的に(ダメなものは自然に淘汰されもし),この国は明治期にはアッという間に西洋の技術を吸収して大国ロシアを破りもし,第2次大戦後は奇跡的に短期間で経済復興もなしえたように思います。
もう一つ言うと,「長いものには巻かれろ」的文化が,この国にはしっくりきます。もしかしたら,社会主義の壮大な実験はソ連邦でなく,この国でなら,成功するかどうかはともかく,根づいたのではないかとも思います(実は計画経済的組織に私は現在も属しております)。中国や北朝鮮で,変形された共産主義がいまだに残っていることも私には何となくわかる気がします。欧米的な言葉で「従属が苦でない文化」と言ったらどうでしょう。それを肯定する気も否定する気もありませんが,経済競争の場面で,このシステムは勝つことは,まずありません。
ふうぅ。ま,それはともかく。日本の大きな経済社会を見た感じで,今はどうですかね。ほんとに。この本に出てくるような魅力的な人が育ち,活躍する土壌(インフラと言うより,やはり文化でしょう)が,今,この国にあるのでしょうか…。どうですかねえ〜。ないとするならば,私たちは少なくとも「短期に効率的に」変革をなしえないであろうと,私は思います。
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