『反省的家族論』菅野純(040522)
 菅野純先生は早稲田大学人間科学部教授(発達心理学・臨床心理学専攻/臨床心理士・上級教育カウンセラー)。新聞などで子供や家族に関する上質のコラムなど拝見し,気になっていた方。

■『反省的家族論』(菅野純/実務教育出版/本体1,400円)

 有名人の家庭の不和や離婚などを扱ったニュースを見ると,「この人はお金持ちかもしんないけど“不幸”だぞお〜」と,よく子供たちに話します。そんな話ができるだけでも,ウチは(いまのところ)まあ,悪くないんだなあと思います。とはいえ,結構キワドイところで均衡を保っているというのが実感。まあ,我が家の場合は,父親=私がしょっちゅう酔っては大破しており,家庭が崩壊する原因が生まれるとすれば,おそらく私本人であろうと(シラフのときに)考えております。

 さてさて。この本は。菅野先生の自伝的話(生育史というそうですが)を交えて『家族論』が展開されています。菅野先生の生い立ち自体が,あまり幸福でなく,また,この本を執筆した当時の家庭の状況も「幸せな家庭」からはほど遠い。そんなことが思い切って書かれており,実にナマナマしい。菅野先生の子供の頃の親・祖父母のこと,また,介護が必要な状況となって親を東京に住まわせて以来の菅野先生のお宅の大変なご苦労が明かされています。父母の世話で疲れた奥様が倒れ,その奥様の世話をした娘さんが高校を辞め,一方で父親=菅野先生は仕事上は成功を収めて行く(先生はこれを「自己実現のひとりじめ」とおっしゃっています)。そんなことが「反省的」に述べられながら,家族の発達課題や幸福な家族の条件など学者さんらしい知見が紹介されています。夫婦,親子,祖父母,親ではない大人との関係などにつき読者も再考させられます。もちろん私も「反省的」に家族や自分の生い立ち(ちなみに私の母は「子供を育てること以上に大事なことってあるのかな?」とよく言います)のことを考えましたし,これから私も経験する家族の喪の仕事,家族の老いなどについて,10歳年上のカウンセラーが「準備をしておけよ」と言ってくれているような気がした部分もありました。オススメです。いい本です。

 なお,この本のコラムでは,漱石とか吉本ばななの事例,森田芳光監督の映画『家族ゲーム』その他様々な小説などから読みとれること,先生の感想なども書かれております(これは当たりはずれあり)。同じ様なペースで文章を羅列することを避け変化がつけられているのですが,これは読み手の好みでしょう。私はちょっと邪魔だなと感じました。面白い話もあるので,本文から外して巻末にまとめてもよかったようにも思いました。それとカバーのイラストはとてもいい(家族が一緒に食事をすることの重要性も,この本では強調されています)のですが,帯の文言は理解不能。“家族は「関係」ではなく「存在」であった”は,読み終わってみてもピンとこない。これは私の読み方が甘いからなのだと思いますが,いい内容の本だけに,もっと読者が読みたくなるような,キャッチはなかったのかな〜という気がします。「どんな家庭でも,一歩踏み外せば,家庭の台座が揺れ動いてしまうような危うさを持っている」(175ページ)とか「幸せな家庭をつくるという大事業」(140ページ),「家庭を営むことが人間にとっては一大事業であり,それに賭けることは自己実現的などんな目標にも決して劣るものではない」(144ページ)あたりがよかったんじゃないでしょうかね。とはいえ,本のつくりは全体に丁寧な感じで,好もしいです。

 家族についてこれだけまとめた文章を読んだのは初めて。勉強になりました。菅野先生,どうもありがとうございました。


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