『独立自尊』北岡伸一(040508)
 薦めてくれた方があって(ありがとうございました。S・S先生),福沢諭吉のお勉強。

■『独立自尊』(北岡伸一/講談社/本体1,900円)

 北岡伸一先生は,気になっていた政治学者。今は国連大使・東大法学部教授です。昔から有名なのですが,見た目がお若いので,一体この先生はおいくつなのだろうかと思っておりました。昭和23年生まれだそうで,私より10歳ぐらい年上なんですね。ということは55歳ぐらい。
 北岡先生は「はじめに」で,福沢諭吉の真髄を知ることが混迷の中で手探りをしている人に役立つだろうとおっしゃっています。松下圭一先生の『政治・行政の考え方』を拝読したばかりでこの本に出会い,またしても現在の自分や社会のあり方を考えてしまいました。む〜。歴史(未来を含む)という時間軸に貫かれた国際関係という広い平面(現実政治の場)内にいる意識とでもいうのでしょうか,個人の集積が「国家」という集団になるという当たり前なことについての考え方というのでしょうか,こういう意識は,本当に今,希薄です。国民がヘボけりゃ国もヘボくなるし,国際社会の中にいるという意識がないと,そこで通用しない選択をしてしまうぞ,といった話。
 この本のサブタイトルは「福沢諭吉の挑戦」。福沢諭吉さんは市民・自治体・国の「独立自尊」を生涯唱えたそうです。明治の昔なら「お上」頼み的意識は,まだ残っていても仕方ないかもねという気もしますが,100年後の松下先生も同じ様なことをおっしゃっています。それにつけても,ちょっと前に,我々が話題にした「自己責任」の話と比べると眩暈がします。はは。国会議員の年金問題への対応も「制度が悪い」ときどき「自己責任」ってところ。党利党略・省益の追求,浅田農産・三菱ふそうの組織の論理優先,それ自体は基本的に悪くないはずなのだけれども,「正義」とか「公益」といった近代市民社会の市民・組織が最低限考慮しなくてはならないところができていないので,信じがたい不祥事も起きてしまいます。兵隊ごっこの延長なのか儒教の教えが社会に浸透しすぎているのか,トップ・上役・年長者がアホだと組織(市民の集合)内の歯止めがかからず政治家も官公庁も企業も「あってはならないこと」をたびたび起こしてしまいます。人ごとと思えないのは私だけではないはず。これが私たちの「日本」。「独立自尊」は遠いなあ。まあ,諸外国のニュースを見ても脱力するようなニュースが多いので,日本だけがヘボいわけではありませんが,それでよしとしたら世界はよくならない。あ。いつの間にか随分大きなことを言ってしまった…。

 またまた「はじめに」からの引用。

 「福沢のような才能に恵まれた人は稀である。しかし,自らを高く持して歩むこと,歩もうと試みることは,福沢でなくても出来ないわけではない。そういう独立自尊の精神こそ,混迷の時代に最も必要なものである」(7ページ)

 北岡先生は,東大でもこういうことをおっしゃっているのでしょう。また国連大使として福沢ばりの気概と智慧を持って活動されているのでしょう。ますますのご活躍をお祈りいたします。ありがとうございました。勉強になりました。オススメです。


Google

TOPへBACK

このサイトは「目次部分」「本文部分」という2分割の画面で表示される仕様にしていますが,検索エンジン経由ですと単独のページがピックアップされる場合があります。そのような場合には,恐れ入りますが以下をクリックして,新たにアクセスし直してください。
【注】2分割で表示されている場合に下をクリックしますと,フレームの中に2分割の画面ができてしまいますのでご注意ください。その場合はブラウザの「戻る」ボタンを押していただくと,現在の画面に戻ります。
http://homepage1.nifty.com/kanen/