『政治・行政の考え方』松下圭一(040429)
 いつ頃からか定かではありませんが,ずっと課題図書として置いてあった本。まちづくりに関する,多分,亀地宏先生(フリージャーナリスト/元日本経済新聞)のご著書で読んだ,田村明先生(地域政策プランナー・法政大学名誉教授/元横浜市企画調整局長)がかつて手がけられた横浜の馬車道に行った(「横浜」(040426))のが,何となくこの本を読んでみたくなったきっかけ…かも。

■『政治・行政の考え方』(松下圭一/岩波新書/本体640円)

 例によって,まったく不勉強でお恥ずかしいですが,松下圭一先生(法政大学名誉教授)は,地方自治の専門家と思っておりました。この本を読んで,大政治学者なのだとわかりました。いやはや。世の中にはホントにすごい方がおられるものだと改めて感服した次第です。巨人ですね。この方は。で,この本は名著です。この本を読むと,今の政治の動きは,松下先生の両手のひらの中にある…と,そんな気になります。先生はみんなお見通し。このところ,いろいろな知事さんたちのお話をうかがう機会があり,その都度感銘を受けていたわけですが,松下先生がずっと前からおっしゃっていることの,今は途中の段階なんだあと思ったことでした。
 エライ方のお話はたいてい私ナンゾの度肝を抜くラジカルな話が多いのですが,松下先生も突き抜けていらっしゃる。まあ,そうでなくては「研究者」なんて言えないといえばそうなんですが。しかし,驚きました。この本は1998年4月発行。1998年時点で松下先生は69歳。なので今年は75歳になられるんですね。さぞ世の動きのノロサがじれったいことでしょう。先生が思っておられるような世の中になるのには相当な時間がかかることはお見通しだとしても…。

 この本の章立ては次のとおりです。
  
1.日本国憲法の50年
  
2.官僚内閣制から国会内閣制へ
  
3.国会オンブズマンの制度設計
  
4.市民立法の発想と法務
  
5.公共政策づくりにとりくむ
  
6.政治学では何が問題なのか

 まず,日本国憲法から説き起こされたことからして驚きました。まるで憲法や行政法の学者さんに喧嘩を売っているような記述もあります。日本国憲法は明治憲法的に運用されており,それの裏付けをするような理論の研究や解釈学ばっかやって何なんだ…といった調子。現在の多くの学者さんなら「専門外なんで」と逃げてしまいそうなところを,バシバシ突いておられます。「憲法は国レベルの政治設計図」と位置づけた上で,国際機関・国・自治体の三政府のあり方なんてことが議論されます。国内の議論を超えて,地球規模での政治制度を構想されておられるのでございます。われわれの感覚からすれば,そんな大きな話,到底実現できると思えませんけど…というところなのですが,でも,じゃあ,小泉首相や自治体の首長にこういうことを考えておいてもらわなくていいのか,というとそんなことはないのでした(「未納○兄弟」なんて話してるのは,ホント情けない。EUはまた一歩“実験の輪”を広げましたね。そういえば…)。で,政治家にこういうことを考えさせるのは誰かといえば…。そんなわけで,現役の政治学者にも公務員にも市民にも耳に痛いことの連発。オススメです。特に政治学を学ぶ若い方にはぜひ読んでいただきたい。政治学も面白いですねえ。


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