『新版 現代社会100面相』鎌田慧(040320)
 『光速より速い光』(●近頃の読書(2004.3.8))が科学の世界のチト苦しい読書だったので,人間の世界に帰ろう&理解しながら読めるモノを読もうということで,鎌田慧さんの本。それも岩波ジュニア新書。中学生から高校生ぐらいを念頭に書かれたシリーズ。私にはちょうどいい。

■『新版 現代社会100面相』(鎌田慧/岩波ジュニア新書/本体640円)

 この本は1993年初刷,私が読んだのは1998年の11刷。鎌田慧さんが若い世代に現代社会の様相やそれについての鎌田さんのお考えを伝えるという形で構成されています。約200頁。それで100本。つまり1テーマ当たり2頁。短い。著者にはお気の毒。ですが,まあ,若い人には,このような分量がちょうどいいのかもしれません。
 まず,「自衛隊」「派兵とPKO」というところから始まります。その流れで「教科書検定」「指紋押捺」「ジャパゆきさん」と続きます。北朝鮮による拉致被害者の方々はもちろんお気の毒で,私も早くうまく解決してほしいと願う者ですが,それと関連して,戦時中私たちは,朝鮮・韓国の人たちを「拉致」したどころではなかったことを,改めて考えねばならない,少なくとも心の中にそれを持っていなくてはいけないと思ったことでした。私たちは,6,70年前には,中国・朝鮮・韓国などから人々を強制連行,強制移住させ,従軍慰安婦にしていたのであります。う〜。
 次いで,「死刑制度」「第五福竜丸」「金権政治」「失業」「テクノストレス」「脳死」「環境破壊」「労働組合」などと続き,最後のテーマは「過労死」です。

 鎌田さんはいい人で,「みんなで人間らしく暮らそうね」と心から願っている方。不正は嫌い。当たり前ですが。権力(…と鎌田さんは思っていらっしゃると拝察。私は組織とか集団だと思います)には強い疑いを持っていらっしゃる。政治にせよ,企業にせよ。ここが肝心。不正はイカンと皆思っているのだけれども,政治や企業のすることは是認しがち(暴力反対,でも自衛隊派兵は容認とかね)。しかし,鎌田さんは,政治や企業のすることには非人間的なこと・人権をないがしろにすることが多いんだぞ,見逃しちゃイカンぞと再三警告を発していらっしゃいます。ざっと取り扱われているテーマを見てもおわかりいただけると思います。書かれていることには同感することが多いです。

 1つの視座から社会を見ることは大切で,大人になるというのは,そのモノサシを持つことだと思います。我が子にもぜひそういうモノサシを持ってもらいたいと父として,私も願っております。

 あ〜,でもねー。鎌田さんが子供たちに伝えたいこと(伝えなくてはいけないと思っていらっしゃること)もわかるし,もっともなんですけど,いい話も書いて欲しかった。鎌田さんにはあえて視座をずらしていただきたかった。あんまり思いつきませんが,この国が国際社会で貢献していること(その第一は平和主義を維持して国際社会で生き延びていけることを実証することだと私は思っていますが),立派な取組みがあること,立派な人がいること,を何とか盛り込んでほしかった。

 バブルはよくないけれど,相場が,皆が行けると思えば上がり(これが極端になるとバブル),皆がダメだと思えば下がるように(これの連鎖がデフレスパイラル),悲観的要素ばかりを考慮しすぎたり,無力感を肯定するようなことばかりを子供たちに見せていたら,本当にこの国は浮上できなくなるぞ,と思いますし,現実にそうなっているような気がします。う〜ん。ま,その最先端は家庭なんですが…。子供たちに見えている私の背中は…,『蹴りたい背中』(読んでないけど)だろうなあ…。

 とまあ,今回もいろいろと考えさせてくれる読書でございました。鎌田さん,いつもありがとうございます。オススメです。


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